Sergent Pepper's Lonely Hearts Club Band (1967) |
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1. | Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band (Lennon & McCartney) |
2. | With A Little Help From My Friend (Lennon & McCartney) |
3. | Lucy In The Sky With Diamonds (Lennon & McCartney) |
4. | Getting Better (Lennon & McCartney) |
5. | Fixing A Hole (Lennon & McCartney) |
6. | She's Leaving Home (Lennon & McCartney) |
7. | Being For The Benefit Of Mr. Kite! (Lennon & McCartney) |
8. | Within You Without You (George Harrison) |
9. | When I'm Sixty-four (Lennon & McCartney) |
10. | Lovely Rita (Lennon & McCartney) |
11. | Good Morning Good Morning (Lennon & McCartney) |
12. | Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band (Lennon & McCartney) |
13. | A Day In The Life (Lennon & McCartney) |
Produced by George Martin
[参加ミュージシャン] ()内は、参加した楽曲と担当した楽器を表わす
ジョージ・マーティン (4, 10,
13: ピアノ、2, 7, 12: オルガン)、マル・エバンス (7: ハーモニカ、13: ピアノ)、ニール・アスピナル
(7: ハーモニカ、8: タンブーラ)、他
[アルバム概論]
"バンド・スタイルからの解放"
「サージェント・ペパーズ」は、それまでに発表されたビートルズ作品からの大きな断層を感じさせるアルバムである。その背景には、一枚のアルバムのレコーディングに5ヶ月という長期の時間を費やしたことによって生まれる精神的なゆとりやそれ故の集中力があったと考えられるが、加えて、アビーロード・スタジオへ住み込んでほとんど我が家のような感覚でスタジオ内の機材を気ままに使えたことや、彼らが要求するサウンド・クオリティを生み出すための努力を惜しまない優秀なエンジニアに恵まれた点も、このアルバムの完成を可能にした背景として見落とせないポイントであろう。
しかしながら、本作でのビートルズと過去の作品における彼らとの決定的な相違は、本作におけるビートルズが、ロック・バンドの形態を維持するうえで不可避的に受け入れざるを得なかったバンド・スタイルという表現上の束縛から遂に解放されたということであり、これは、彼らがロック・グループとしてのライブ活動に完全なピリオドを打つことによってようやく成し遂げられたものと考えられる。
(本アルバムの収録曲の中で、明確にロック・バンドとしてのコンセプトを感じさせるナンバーは2回にわたって登場する "Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band" しかないが、この曲にしても、彼らが架空のバンドを演じるという作品上のアイディアに従ってライブ・バンドの形を成しているに過ぎない)
"ビートルズの最高傑作か?"
突然に遥かな高みへ飛翔したかのように感じられる本作であるが、「サージェント・ペパーズ」は他のビートルズ作品との比較においてどのように位置付けられるべきアルバムであろうか。
まず、ライブ・バンド時代のアルバム (すなわち「プリーズ・プリーズ・ミー」から「リボルバー」まで) と比較すると、本作におけるビートルズが、バンド・スタイルの制約から完全に解き放たれたことによって格段に大きな表現上の自由を獲得していることは疑問の余地がない。
また、本作以後のアルバムとの比較においては、かなり逆説的な言い方にはなるものの、本作のほうがよりロック・バンド的なアルバムとして評価できると考えられる。例えば、本作と肩を並べる傑作として名高い「アビイ・ロード」は、その音楽的な美しさについては十分に高く評価できるものの、クラシック的な音楽表現へアプローチし過ぎたために、ロック・アルバムとしての躍動感においては本作に及ぶものとはなり得ていない。
(この議論は、本作と「アビイ・ロード」をそれぞれモーツァルトのようなクラシック作品と聴き較べた時により明らかとなる。「アビイ・ロード」は、個々の主題の美しさではクラシックの名曲に比肩し得るものの、旋律を展開させるテンポがあまりにも遅いために聴き手にかなり間延びした印象を与えてしまう。一方、本作は、どの瞬間においてもロックンロールとしてのビートがスリリングに息づいているため、モーツァルトのようなクラシック分野の作品と聴き較べてもその緊張感を失うことがまったくないのである)
そもそも数分間というきわめて限られた時間の中で、憶えやすく印象的なフレーズを繰り返し使用することが形式上のルールとされるポップ・ミュージックにおいては、この様式の中でより緻密なアイディアの表現を求めようとすると、与えられた時間内により多くのサウンドを効果的に重ね合わせることによって表現上の変化を生み出すという方法を一つの解決策として考えざるを得ない。
その一方で、単なるアイディアの詰め込みは作品のコンセプトに散漫な印象を与えかねず、アイディアの緻密さと楽曲としての緊張感の維持という相反しがちな二つのテーマをいずれも高い水準で並存させることは、結果的に音楽表現上の難題の一つとなってしまう。そして、この難題をいかに解決するかという視点において、本作は奇蹟と言っていいほどの成功を収めた事例ではないかと感じるのである。
"ロック史上に与えたインパクト"
元来、アルバムという音楽作品の発表形式はミュージシャン自らが発案したものではなく、シングル・レコードよりもさらに高価な商品の創出を意図するレコード会社との契約に束縛されたミュージシャン・サイドがやむなく受け入れてきた作品提供のフォルムであった。ビートルズは、この関係を逆手に取ることでミュージシャン・サイドの創作意図がそのフォルムに反映され得るアルバム (すなわち「ラバー・ソウル」と「リボルバー」) を作り上げたわけだが、「サージェント・ペパーズ」がこの延長上に位置付けられるべきものであることは疑う余地がない。
架空のバンドによるコンサートをアルバム化するという「サージェント・ペパーズ」の試みは、アルバム全体を一つのコンセプトでまとめ上げたのみならず、曲の配置からそれぞれの曲間の音の流れまでを統合されたアイディアに基づいて仕上げるというそれまでのロック・ミュージックには例を見ない作品形式を提示することとなった。(この試みが、先に触れた「音楽表現上の難題の一つ」を解決するための努力と分かち難く結びついていることは言うまでもない)
こうして提示された新たな作品形式の可能性は、フー、キンクス、スモール・フェイセズらによる一連のコンセプト・アルバムの創作を促すとともに、多くのミュージシャンが「サージェント・ペパーズ」越えを目指して試行錯誤するなかでポップ・ミュージックの表現形式上のルールそのものを打破する方向へ向かうことにより、キング・クリムゾンやイエスらによるプログレッシブ・ロック誕生の引き金を引くという結果 までをも招来するに至るのである。
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