PLEASE PLEASE ME (1963) | |
1. | I Saw Her Standing There (Lennon & McCartney) |
2. | Misery (Lennon & McCartney) |
3. | Anna (Go To Him) (Arthur Alexander) |
4. | Chains (Gerry Goffin & Carole King) |
5. | Boys (Luther Dixon & Wes Farrell) |
6. | Ask Me Why (Lennon & McCartney) |
7. | Please Please Me (Lennon & McCartney) |
8. | Love Me Do (Lennon & McCartney) |
9. | P.S. I Love You (Lennon & McCartney) |
10. | Baby It's You (Mack David, Burt Bacharach & Barney Williams) |
11. | Do You Want To Know A Secret (Lennon & McCartney) |
12. | A Taste Of Honey (Ric Marlow & Bobby Scott) |
13. | There's A Place (Lennon & McCartney) |
14. | Twist & Shout (Phil Medley & Bert Russell) |
ビートルズの記念すべきデビューアルバムは、ポール・マッカートニーのロックナンバー
"I Saw Her Standing There" で幕を開ける。ポールのベースラインとボーカルパートが強力な2本の柱となって曲を支えている。2本のギターは主にリズムセクションを担当しながら、間奏部分でジョージと思われるギターソロが入る。この部分でも、ポールのベースは退くことなく曲の底辺を支えている。この曲は、1989年にスタートしたポールのワールドツアー(1) でもコンサートナンバーとして取り上げられているが、ポール独特の骨太ベースにやや翳りが感じられ、リズムギターの手助けを受けている印象があるのは、オリジナルの力強さのゆえだろうか。
この曲のほか、アルバムには7曲のオリジナルナンバーと6曲のカバーが含まれている。オリジナル曲の中で注目すべきは、アルバムのタイトルナンバーでもある
"Please Please Me" である。デビューの翌年1月にシングルとしてリリースされたこの曲は、2月16日にビートルズとして初めての全英チャート1位
に輝いている。この曲について、当初ロイ・オービソン(2) のスタイルを意識してバラッド風に作られていたものを、ジョージ・マーチン(3) のアイディアでアップテンポによる現在のスタイルに改めたとのエピソードは有名である。
その他のオリジナル曲を見ても、黒人音楽からの影響を色濃くのぞかせる "Love Me Do" (デビューシングルとは別バージョン)、印象的な導入部とすでにジョン特有のリズムギターの萌芽をうかがわせる "Do You Want To Know A Secret" など、うかつに通り過ぎることのできないナンバーが並ぶ。とりわけ、ジョンが作曲を手掛けたとされながらも全編をジョンとポールのコーラスが貫く "There's A Place" は、ある意味でビートルズ・ナンバーの原点とも言える作品である。
カバー曲の選択にも独特のこだわりが感じられる。比較的よく知られているブルースナンバーをコピーすることで自分達の技巧を高めていったローリングストーンズ(4) とは対照的である。ローリングストーンズ(4) は、敬愛する黒人ミュージシャン達へより近付くために曲のカバーを試みたが、ビートルズは最初から自分達のスタイルを強く意識して、これにあわせてカバー曲を選んでいる節がある。いずれがよいかという問題でないことは勿論だが、ビートルズというロックバンドのミュージシャンとしての意識を伺ううえで興味深いテーマのように思う。
総括すると、このアルバムのポイントは2点に集約される。第一に、このアルバムは、すでにライブバンドとして人気を高めつつあったビートルズのライブの熱気をスタジオへ持ち込むことを意図しており、そのゆえに曲作りと録音技術を後回しにした感があるため、善くも悪くもライブバンドとしてのビートルズを伝える部分が大きいということである。プロデューサーのジョージ・マーチン(3) は、少なくともこの時点ではアイドル・ロックバンドを引き受けたという程度の認識であったことも考えられ、ビートルズ自身もこの時に自分達が向かうべき音楽の方向性について明確なビジョンを持っていたようには感じられない。
第二のポイントは、それにもかかわらず、ビートルズの面々がこのアルバムにおいて個性的かつクオリティの高い作品を数多く残していることである。このアルバムには、"Please Please Me" や "P.S. I Love You" のように、オールディーズのレッテルを張られる日が永久にやって来ないであろう名曲が詰まっている。
アーティストとしての資質はそのデビュー作に最も色濃く表れるというが、このアルバムは、紛れもなくビートルズがその後に発現することとなる資質の一端をあらわしている。ただし、発現の中身をすでに知っている我々にとっても、このアルバムからその後のビートルズの軌跡を想像することは難しい。ビートルズが、想像を超える成長を遂げていくからである。
以上 "Please Please Me" 終わり
注) 日付等のデータについては、アルバムのライナーノーツを参考にしている。また、"Please Please Me" のアレンジに関する記述については、マイルズ編・吉成伸幸訳「ビートルズ伝説」(シンコーミュージック 1986年) を参考にした。
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