ラウンドアバウト | |
イエス |
なごみ
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ダンス
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ソウル
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原題 | Roundabout |
リリース | 1972年 |
作詞・作曲 | ジョン・アンダーソン、スティーヴ・ハウ |
プロデュース | イエス、エディ・オフォード |
演奏時間 | 8分29秒 |
収録アルバム | 「こわれもの」(アトランティック/1971年) |
ミュージシャン | ジョン・アンダーソン(ボーカル)、ビル・ブラッフォード(ドラムス、パーカッション)、スティーヴ・ハウ(ギター、ボーカル)、クリス・スクワイア(ベース、ボーカル)、リック・ウェイクマン(キーボード) |
[レビュー]
イギリスを代表するプログレッシブ・ロック・バンドのイエスは、1972年にアルバム「危機」(原題は "Close To The Edge")を発表する。「危機」は、わずか3つの楽曲で全体を構成するというトータル性に加え、個々のプレイヤーの高度なテクニックとそのコンビネーション、さらには複数の主題をシンフォニックに練り上げる構造主義的なコンセプトなど、そのアイディアと音楽的なクオリティの両面 においてビートルズの「サージェント・ペパーズ」にも比肩しうる傑作アルバムである。
とりわけ、キーとなる幾つかの主題を定め、各主題部分の相互の組み合わせと配置の妙によって楽曲全体の俯瞰図を描くという作品構築のコンセプトからは、当時の大曲主義的なプログレッシブ・ロックの流行をはるかに凌駕するアイディアの緻密さとトータル・アルバムとしての完成度の高さがうかがわれる。
イエスが「危機」に先駆けて1971年に発表したアルバムが「こわれもの」("Fragile")であり、本ナンバー「ラウンドアバウト」は、「こわれもの」からシングル・カットされて全米での大ヒットを記録したシングル・ナンバーである。
アルバム「こわれもの」の収録曲は、各メンバーのソロ・パートを中心に据えた作品と、次作「危機」の出現を予感させるコンセプチュアルな作品に二分されるが、「ラウンドアバウト」は明らかに後者に含まれるとともに、その特徴を最も強く表出したナンバーと考えられる。
曲は、アコースティック・ギターのメロディアスな序奏で始まり、一転して、アップテンポで挿入されるリズム・トラックとジョン・アンダーソンのリード・ボーカルによる第一主題へと引き継がれる。この部分では、独特のフィンガリングで速いテンポを刻むクリス・スクワイアのテクニカルなベース・プレイが聴き手の耳を奪う。続く第二主題を彩 るのは、リック・ウェイクマンの華やかな速弾きによるオルガン・ソロである。
展開部ではビル・ブラッフォードのパーカッションが前面に出て曲のイメージを変えながら、アコースティック・ギターの序奏パートが再び登場することによって穏やかな表情のミドル・パートへと無理なく引き継がれる。その後、再び最初の主題に帰って各自のソロ・パートを交えながらのハード・ロック風の展開に至り、やがて三たび登場するアコースティックな序奏パートへ回帰することで静かなトーンのエンディングを迎える。
ドラマティックな旋律の展開を安定したボーカルで支えるジョン・アンダーソンを含め、各プレイヤーの卓越した演奏能力がこの曲の大きな魅力であることは疑いがないが、のみならず、曲全体のコンセプトを俯瞰したうえでの各パートの配置、旋律の組み合わせなど、精密さと堅牢さを兼ね備えたトータリティに基づく楽曲としての完成度の高さこそが、この曲の最大の特徴と言うべきであろう。その意味で、「ラウンドアバウト」はシングル・ナンバーとしての十分な魅力に加え、ロック史上に残る傑作アルバム「危機」のベースを成した作品としても高く評価されるべきものと結論づけられるのである。
[モア・インフォメーション]
イエスは、1969年8月にアルバム「イエス」をアトランティックからリリースしてレコード・デビューを飾る。(イエスは、サザン・ソウルのメッカとして知られるアトランティック・レコードと契約した最初のイギリスのロック・グループとなった)
その後、各年1枚のアルバム・リリースを重ねながら、一部のメンバー・チェンジを経て(オリジナル・メンバーのピーター・バンクスとトニー・ケイの脱退に伴い、ギタリストのスティーヴ・ハウとキーボード・プレイヤーのリック・ウェイクマンが新たに加わっている)、1971年に4作目のアルバム「こわれもの」をリリースする。この作品でプログレッシブ・ロック・バンドとしてのキャラクターを確立したイエスは、翌年の1972年に「危機」を発表することでロック・シーンにおける自らの存在感を決定づける。
若干のメンバー交代を伴いながらも、「リレイヤー」(1974年)、「究極」(1977年)、「トーマト」(1978年)とその後もクオリティの高いアルバムをリリースし続けたイエスは、1983年に、ジョン・アンダーソン(ボーカル)、トレヴァー・ラビン(ギター)、クリス・スクワイア(ベース)、トニー・ケイ(キーボード)、アラン・ホワイト(ドラムス)の顔ぶれでレコーディングしたアルバム「ロンリー・ハート」(原題は "90125")をヒットさせ、このアルバムからのシングル・カット「オーナー・オブ・ア・ロンリー・ハート」を全米ヒット・チャートの上位 へ送り込んでいる。
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