ロック名曲セレクション


エピタフ
  キング・クリムゾン

なごみ
ダンス
ソウル

原題 Epitaph including March For No Reason and Tomorrow And Tomorrow
リリース 1969年
作詞・作曲 ロバート・フリップ、イアン・マクドナルド、グレッグ・レイク、マイケル・ジャイルズ、ピート・シンフィールド
プロデュース キング・クリムゾン
演奏時間 8分48秒
収録アルバム 「クリムゾン・キングの宮殿」(EGレコード/1969年)
ミュージシャン ロバート・フリップ(ギター)、イアン・マクドナルド(管楽器、メロトロン)、グレッグ・レイク(ベース、ボーカル)、マイケル・ジャイルズ(ドラムス)

 

[レビュー]

 元来、シングル曲の寄せ集めに過ぎなかったアルバムという商品単位 にミュージシャン・サイドの創作意図を盛り込み、新たな音楽表現の器として提示することで絶大な支持を集めた最初の作品はビートルズ「サージェント・ペパーズ」であろう。そして、「サージェント・ペパーズ」の成功を受けて、アルバムそのものを特定のコンセプトの表現手段として利用する音楽上の試みがその後のイギリスのロック界へ急速に広まることとなった。

 キンクススモール・フェイセズザ・フーらのロック・バンドが相次いでコンセプト・アルバムやロック・オペラ風のアルバムをリリースするが、やがてより複雑なサウンドと知的なコンセプトの構築によって聴き手を圧倒するロック・グループが続けざまに出現し、彼らの生み出す音楽は、従来のロックとの違いをより明確にするために、総称してプログレッシブ・ロック(進歩的なロック)と呼ばれた。

 ジャイルズ・ジャイルズ&フリップにいたロバート・フリップ(ギター)、管楽器奏者のイアン・マクドナルド、詩人のピート・シンフィールドらを中心に結成され、1969年にアルバム「クリムゾン・キングの宮殿」でレコード・デビューを果 たすキング・クリムゾンは、プログレッシブ・ロックの特徴を印象づける作品でメジャーな成功を成し遂げた最初のロック・バンドである(「クリムゾン・キングの宮殿」は、当時のイギリスのアルバム・チャートで首位 を快走していたビートルズの「アビイ・ロード」を蹴落とし、チャートのトップを奪った)。「プログレッシブ」と呼ばれる新たなロックの概念を世に知らしめるきっかけとなったキング・クリムゾンは、デビュー当時からこの分野の中心を担ったロック・グループと言ってよいだろう。

 本ナンバー「エピタフ」は、キング・クリムゾンのデビュー・アルバム「クリムゾン・キングの宮殿」の収録曲である。キーボード(メロトロン)の奥深い響きを生かした荘厳なサウンドが印象的な「エピタフ」は、初期のキング・クリムゾンを代表する名曲の一つとして高い人気を誇っている。

 曲は、静かな雰囲気の中にも厳かな佇まいを感じさせるメロトロンとギターのイントロによってスタートする。続いて現れる主題部分はボーカルとベース・ラインの二重奏にドラムスを加えただけのシンプルな構成で進行するが、曲の展開に合わせてメロトロンとアコースティック・ギターのメロディアスな旋律が追加され、サウンド全体の重厚感が次第に高められていく。また、間奏部分ではヘヴィなリズム・セクションを従えた管楽器の重奏が登場して曲のイメージに変化が加えられるが、この部分のリズム・パートだけが引き続きその後の展開に引用されることで、再び登場する主題部分への流れがよどみなく形作られている。

 アルバム「クリムゾン・キングの宮殿」は、メロトロンや管楽器を多用した厚みのあるサウンド、ジャズの要素を取り込んだドラムスの複雑な動きなどによって従来のロックンロールとは一線を画する深みのある音世界を作り上げているが、その一方ではコマーシャルな成功に裏付けられるとおりリスナーに対して難解さを意識させない聴き易さをその特徴としていることも事実である。

 「21世紀の精神異常者」や「ムーン・チャイルド」のように精密なサウンド構成と楽曲としての構築力が魅力的な収録曲に対し、荘厳なサウンドの中にもシンプルなフレーズと伝統的な重奏の美しさを生かすコマーシャルなサウンドを組み込んだ「エピタフ」は、先取的な実験精神とコマーシャリズムの危ういバランスの上に立脚するプログレッシブ・ロックのあり方に対して、一つの回答を与える作品になったとも言えるのではないだろうか。

 

[モア・インフォメーション]

 デビュー後のキング・クリムゾンは、メンバー交代を頻繁に繰り返しながらも「ポセイドンのめざめ」(1970年)、「リザード」(1970年)、「太陽と戦慄」(1973年)などの話題性に富むアルバムを発表し続ける。

 その後、しばらくの休止期間はあったものの、1981年にはロバート・フリップ(ギター)、エイドリアン・ブリュー(ギター、ボーカル)、トニー・レヴィン(ベース)、ビル・ブラッフォード(ドラムス/元イエス)のメンバーで7年振りとなるアルバム「ディシプリン」をリリースして活動を再開する。このメンバーはさらに「ビート」(1982年)、「スリー・オブ・ア・パーフェクト・ペアー」(1984年)の2枚のアルバムをリリースして、旺盛な実験精神の中にも独特の幽玄さが漂うクリムゾン・サウンドを展開していく。

 なお、キング・クリムゾンは、このグループからその後のプログレッシブ・ロックを担う多くのミュージシャンを輩出したことでも知られている。オリジナル・メンバーの一人であるベーシスト兼ボーカリストのグレッグ・レイクは、元ナイスのキース・エマースンとともにエマーソン、レイク&パーマーを結成して高い人気を誇った。また、アルバム「レッド」(1974年)他に参加しているべーシスト兼ボーカリストのジョン・ウェットンは、80年代初頭にプログレ風のサウンドを復活させて「ヒート・オブ・ザ・モーメント」(1981年)などのヒット・シングルを連発したスーパー・グループ、エイジアの一員として活躍している。

 オリジナル・メンバーのなかでもロバート・フリップと並んでキング・クリムゾンの中心的な存在だったイアン・マクドナルドは、「クリムゾン・キングの宮殿」の発表後にグループを離れ、T.レックスのアルバム「電気の武者」(1971年)などに参加した後、米国へ渡ってギタリストのミック・ジョーンズ、シンガーのルー・グラムらとともにフォーリナーを結成する。1977年にデビュー・アルバム「栄光の旅立ち」(原題は "Foreigner")を発表したフォーリナーは、ポップとハードの両面を併せ持つロック・サウンドで人気を集め、米国の音楽マーケットで大きな成功を収めている。

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