Revolver (1966)
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1. | Taxman (George Harrison) |
2. | Eleanor Rigby (Lennon & McCartney) |
3. | I'm Only Sleeping (Lennon & McCartney) |
4. | Love You To (George Harrison) |
5. | Here, There And Everywhere (Lennon & McCartney) |
6. | Yellow Submarine (Lennon & McCartney) |
7. | She Said She Said (Lennon & McCartney) |
8. | Good Day Sunshine (Lennon & McCartney) |
9. | And Your Bird Can Sing (Lennon & McCartney) |
10. | For No One (Lennon & McCartney) |
11. | Doctor Robert (Lennon & McCartney) |
12. | I Want Tell You (George Harrison) |
13. | Got To Get You Into My Life (Lennon & McCartney) |
14. | Tomorrow Never Knows (Lennon & McCartney) |
Produced by George Martin
[参加ミュージシャン]
()内は、参加した楽曲と担当した楽器を表わす
ジョージ・マーティン (8,
14: ピアノ、13: オルガン、6: コーラス)、トニー・ギルバート (2: バイオリン)、ユルゲン・ヘス
(2: バイオリン)、シドニー・サックス (2: バイオリン)、ジョン・シャープ (2:
バイオリン)、スティーブン・シングルス (2: ビオラ)、ジョン・アンダーウッド
(2: ビオラ)、ノーマン・ジョーンズ (2: チェロ)、デリック・シンプソン (2:
チェロ)、アニル・バグワット (4: タブラ)、アラン・シヴィル (10: フレンチ・ホルン)、アラン・ブランスコーム
(13: テナー・サックス)、ピーター・コウ (13: テナー・サックス)、レス・コンロン
(13: トランペット)、エディ・ソーントン (13: トランペット)、イアン・ハマー
(13: トランペット)、ニール・アスピナル (6: コーラス)、ジェフ・エメリック
(6: コーラス)、パティ・ハリスン (6: コーラス)、マル・エバンス (6: コーラス)
[アルバム概論]
"各メンバーによる個性の確立"
「リボルバー」は、一般的に、ビートルズがライブ活動主体のアイドル・グループからレコーディング・アーティストへの変貌を成し遂げたアルバムと言われている。現実に、このアルバムのレコーディング完了直後に行われたツアーを最後に、ビートルズは二度とコンサート・ツアーに出ることはなく、また、収録された楽曲の内容からもライブ演奏を想定して制作された作品群でないことは明らかであった。
この変化をもたらした要因は多岐にわたるものと考えられるが、とりわけ本稿においては、個々のメンバーによるアイデンティティの確立という側面からこの問題を考えてみたい。
各メンバーのソングライターとしての色分けが明確になる傾向は、アルバム「ヘルプ!」の頃から少しづつ表れ始めてはいたが、本作においてその特徴は際立って顕著になったと言ってよい。「リボルバー」においてポールは、心に沁み入るポップ・ソングの作曲者とシャウト系のロックンローラーという二つの顔を作品や状況に応じて巧みに使い分けているが、この役どころは、ポールがソロ時代を含めて生涯背負い続ける彼の音楽家としてのキャラクターの鋳型となるものであり、ポールはこのアルバムにおいて自らの音楽家としての個性を完全に確立したと言ってよいであろう。
ジョージもまた、自らシタールを奏で、かつ、インド系のミュージシャンを起用することで、自身の音楽世界を力強く構築している。本作において明らかになった彼の音楽スタイルは、ポールの場合と同様、ジョージの生涯を通しての音楽活動の起点となるものであった。
さて、問題はジョン・レノンである。ジョンも、もちろん本作において大きな変化を見せているのだが、その変わり様はポール、ジョージの場合とは明らかに異なっている。ポール、ジョ−ジの二人は、アルバムのリリースを経るごとにソングライターとしての着実な成長を遂げていく様子が伺えるが、ジョンの場合、初期のアルバムで発表した作品が、その音楽性をより深めることによって「リボルバー」の収録作品に形を変えたとは考えにくい一面 がある。"A Hard Day's Night"、"You Can Do That" あるいは "Help!" などの進化形が、"I'm Only Sleeping" や "Tomorrow Never Knows" であるとは納得し難いのである。
(一方、例えばポールの場合、"Things We Said
Today" や "I'll Follow The Sun" のような作品群から
"Eleanor Rigby" や "For
No One" に至る道のりが、音楽作品としての直線的な進化を遂げていくプロセスであることはきわめて理解しやすい)
"ジョンの変質とグループとしての軋み"
ポールとジョ−ジの二人が、アイドルからアーティストへの変貌を見せる過程の中でそれぞれのソング・ライティングの才能を豊かに開花させていくのに対し、ジョン・レノンは、単純に成長したとは言い難いほどの質的な変化を遂げたという点において、他の二人とは明確に区別 されなければならない。(変質の具体的な内容については、個別の楽曲紹介の中で触れることとしたい)
初夏を迎えた若木がその新緑を誇るがごときポール、ジョージ組の艶やかな成長ぶりと、過去への決別をあらわにするジョンの変質とが同時並行で生じているために、リアルタイムでの理解は困難であったと想像されるが、「リボルバー」当時のビートルズには、すでにグループとしての瓦解の種は芽生えていたと思う。そして、その原因は、見ようによっては無責任とも感じられ、また、考えようによっては過去の成功に捕らわれない軽やかなステップを踏むかのごときジョン・レノンの表現者としての変化に対する欲求の強さと、これを素直に受け入れる彼自身の精神の自由度にあったのではないかと想像する。
以上のように仮定するならば、20世紀における最高のロック・アルバムと形容される「サージェント・ペパーズ」は、メンバー各自が異なる方向へ向かって爆走し始めたビートルズが、お互いを繋ぎ止めるロープをぎりぎりのところで握り続けることによって完成させたミラクル・ワールドであったと言えよう。そして、その直前にリリースされた「リボルバー」は、近付きつつある頂点の予感と、その背後に迫る崩壊の足音がともにその響きを内包するアルバムであったと結論づけられるのである。
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