ローラ | |
ザ・キンクス |
なごみ
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ダンス
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ソウル
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原題 | Lola |
リリース | 1970年 |
作詞・作曲 | レイ・デイビス |
プロデュース | レイ・デイビス |
演奏時間 | 4分1秒 |
収録アルバム | 「ローラ対パワーマン、マネーゴーランド組 第1回戦」(パイ/1970年) |
ミュージシャン | レイ・デイビス(ギター、ボーカル)、デイヴ・デイビス(ギター、ボーカル)、ジョン・ダルトン(ベース、ボーカル)、ミック・エイボリー(ドラムス)、ジョン・ゴスリン(キーボード) |
[レビュー]
レイとデイヴのデイビス兄弟を中心とする英国出身のロック・バンド、キンクスは、1964年2月にリトル・リチャードのカバー曲「のっぽのサリー」をリリースしてレコード・デビューを飾る。その後、3枚目のシングルとして発表した「ユー・リアリー・ガット・ミー」が全英チャートの第1位 を獲得するヒットとなって、キンクスは人気バンドの仲間入りを果たした。
デビュー当時はブルース色の強いロックを展開し、また、バンドの中核的ソング・ライターであるレイ・デイビスの個性を反映して英国トラッド風の作品を作り続けていたキンクスだが、1968年のアルバム「ヴィレッジ・グリーン・プリザヴェイション・ソサエティ」の発表を契機にコンセプト・アルバム路線への道を歩むことになる。
本ナンバー「ローラ」は、キンクスが3枚目のコンセプト・アルバムとしてリリースした「ローラ対パワーマン、マネーゴーランド組 第1回戦」からのシングル・カット・ナンバーである。発表と同時にイギリスでの大ヒットを記録した「ローラ」は、キンクスの全キャリアをとおして最もよく知られる彼らの代名詞的作品となった。また、インターネット上でダウンロードされる楽曲リストの上位 にもランクインするなど、「ローラ」は、ロック・クラシックとしてのポジションにとどまらず、近年においても高い人気を誇る異例のナンバーの一つとなっている。
曲は、2種類のミドル・パートを交えながら主題部分を繰り返して演奏するロンド形式によるロック・ナンバーだが、繰り返される主題部分における大胆かつ精密な表情の変化がこの曲の最大の魅力と言えよう。
アコースティック・ギターの伴奏に乗せて低音で軽めのボーカルからスタートする主旋律は、ドラムス、ベースの順で加わるリズム・トラックとハードロック風のギター・ソロを経て、オクターブを違えた2声によるコーラス・パートへと引き継がれる(2回目の主題部分)。続いて現れる3回目の主題部分では、高音のボーカル・パートが主旋律を構成することで、それまでのボーカル・ラインとはメインとバック・コーラスの主従関係が逆転する。さらに4回目の主題部分に至ると、再び低音のボーカルがメインへ返り咲くとともに、マイナー・コード主体のメロディ・ラインへと旋律そのものが大胆な表情の変化を見せる。
最後のフェード・アウト部分を除けば、わずか3分半ほどの間にめまぐるしく展開されるイメージの変化と、それを少しも不自然に感じさせないアップ・テンポのリズムによるスピーディなノリの良さが、ロックンロール特有の華やかさと相俟って聴き手を最後まで魅了していく。文字どおり、時代を超えて魅力を放ち続けるロック・スタンダードの一曲と言えるだろう。
[モア・インフォメーション]
アルバム「ローラ対パワーマン、マネーゴーランド組 第1回戦」からは、「ローラ」とともに軽快なロック・ナンバーの「エイプマン」がシングル・カットされ、ともに英国でのヒット・ナンバーとなった。
「ローラ対パワーマン、マネーゴーランド組 第1回戦」は、ロック・バンドのデビューから成功をつかむまでのストーリーと音楽業界への辛らつな皮肉をテーマとするコンセプト・アルバムだが、加えて、キンクスというグループの自叙伝的な性格をあわせ持つという意味においても興味深い作品である。
ビートルズの「サージェント・ペパーズ」以降、特にイギリスでは多くのロック・グループがコンセプト・アルバムの制作に取り組んだが、その多くが、一つのコンセプトによるアルバム全体のイメージの統合という作業に必要以上のエネルギーを奪われることにより、結果 として出来上がる作品がアーティスト独自のスタンスから距離をおいた客観性の強いものとなる欠点を招いた。
対して、キンクスの「ローラ対パワーマン」は、幼少時の体験も含め、バンド自らの経験を踏まえた創作姿勢を一貫しているために、各楽曲を必要以上に対象化する弊害を免れ、彼ら本来のソウルフルなロックンロールを貫くことに成功している。その意味でも、アルバム「ローラ対パワーマン」は、当時のコンセプト・アルバム・ブームの中にあって他の作品とは一線を画すべきアルバムと言えよう。
また、蛇足ながら、ドラマーのミック・エイボリーがレコード・デビュー前のローリング・ストーンズに在籍していたことを加えておきたい(ストーンズのデビュー時にはチャーリー・ワッツと交代している)。
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