ビートルズ特集


WITH THE BEATLES (1963)

 楽曲紹介[1]

"It Won't Be Wrong"

 アルバムのオープニングはジョンの手によると思われる "It Won't Be Wrong" である。ダブルトラックによるジョンのボーカルへ "Yeah" のコーラス (ポールとジョージが交互に担当) がオブリガート的に絡む導入部、コーラスと入れ替わってギターフレーズが登場する主題部分、さらにリードボーカルとコーラスのかけあいが絶妙な美しさを聴かせる展開部と、わずかな時間の中でめまぐるしく表情を変えていく。また、全編を通 して上下に躍動するようなポールのベースラインが曲にエネルギッシュな印象を与え、いずれの面 からもビートルズの曲作りのうえでの特徴を伝えている。前作からの成長と、その後の飛躍を予感させる曲といえる。

"All I've Got To Do"

 "All I've Got To Do" では、ジョンのR&Bへの傾倒ぶりと、ややスカ風の裏打ち的なリズムギターを楽しむことができる。ビートルズのメンバーがモータウン(6) への憧れを口にし、また、実際に音楽上の影響を受けていることは様々な記録や作品の特徴からも明らかだが、同時代のローリングストーンズ(4) アニマルズ(7) のようにストレートなブルースロックを展開していたバンドと比較すると、ビートルズが黒人音楽から受けた影響の痕跡はそれほど直接的に読み取れるわけではない。その中にあって、この曲は、当時のジョンが持っていたR&Bに対するストレートな意識が表れたナンバーとして記憶にとどめられるべきであろう。

 また、この曲ではリンゴ独特のタメのあるドラミングを聴くことができる。この特徴は、後に "Ticket To Ride""Tommorrow Never Knows" でその効果を発揮することになるが、ルーツはこの曲あたりにあるのかもしれない。

"All My Loving"

 アルバムの3曲目は "All My Loving" である。さすがにここに至って、ジョージ・マーティン(3) もビートルズがただのアイドルではないことを認めるほかなかったと思われる。遠からず、近すぎず、驚くほど自然なコード進行によって美しい旋律が紡ぎ出される。このナンバーではジョンの3連符によるリズムギターがよく話題にのぼるが、技術的な面 白さよりも、コード・パターンの美しさを引き出すためのアイディアとして、この3連符が考えだされたに違いない。ジョンはこの曲の中で、展開に応じて大きく分けると3パターンのリズムギターを披露しているが、いずれもジョンの特徴を生かした個性的なプレイである。

"Don't Bother Me"

 "Don't Bother Me" は、公式アルバムに収録されたジョージ・ハリスン初のオリジナル曲として記念すべき作品である。ただし、ジョージの持ち味である半音階を多用した作曲技法などは未だ伺うことができず、同時期のレノン=マッカートニー作品と比較してやや凡庸な作品との印象は免れない。

 話が前後するが、1994年にリリースされた "Live At The BBC" 収録の "All My Loving" において、ポールのボーカルが高音のコーラス・パートへ移行したときに、主旋律のボーカルを担当しているのはジョージである。また、このテイクを聴くと、アルバム収録のテイクと比較してジョージが担当するリズムギターのパートがかなりクリアに聴こえることがわかる。すなわち、当時のジョージは、スタジオの中よりもライブの場においてより大きな比重を占めていたことが想像されるのである。ジョージが、ソング・ライティングの側面 も含め、その存在感をバンドの中で確立するまでにはもう少しの時間を要することになる。

"Little Child"

 "Little Child" は、いかにもジョン・レノンといった印象を受ける軽快なロックナンバーである。ジョンはこの曲でダブルトラックのボーカルに加え、自らハーモニカをプレイしている。明らかにライブ・パフォーマンスとしては再現不可能な録音形態であり、ビートルズがライブ・バンドのみならず、スタジオに足場を移したレコーディング・アーティストとしての意識を持ち始めたことを表すものとは言えないだろうか。

 

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