ビートルズ特集


Rubber Soul (1965)

楽曲紹介[1]

"Drive My Car"

 モータウン(6) を意識してポールが作曲したと言われる作品。アルバムのライナー・ノーツ (日本語版) ではジョンとポールの共作と紹介されているが、リード・ボーカルにおけるポールの圧倒的な存在感、また、1993年にスタートしたポールのワールド・ツアー(16) でオープニング・ナンバーとして演奏されていることからも、ポールが主導権を握って作り上げた作品と考えることが妥当であろう。

 エレクトリック・ギターのイントロでスタートするものの、曲の骨格は、ベース、タンバリン、カウベル等のリズム・トラックによって力強く構築されていく。ボーカル・パートは形のうえではジョンとポールによる2部構成だが、前記のとおりポールの存在感が圧倒的に大きく、ジョンのパートはバック・コーラスのようにも聴こえる。また、サビの直前のコーラス部分でジョ−ジがハーモニーに加わっている。

 間奏でのギター・ソロを除けばメロディ主体のパートがほとんどなく、ミドル・パートでポールが弾くピアノも、あたかも中音部へ移行したベース・ラインのごとくタイトなプレイでセンチメンタルな印象を全く与えない。これほどハードでタイトなナンバーをアルバムのオープニングに起用したことは、このアルバム全体の印象からやや意外な気もするのだが、逆に言えば、この曲はオープニング以外に落ち着く場がなかったとも考えられるだろう。

"Norwegian Wood"

 ロック史上、初めてインド音楽の楽器であるシタールを取り入れたと言われるジョンの作品。この曲でシタールを演奏しているのはジョ−ジだが、以降、自作曲の中でもこの楽器を積極的に採用していくジョージには、ラーガ・ロックの第一人者とのイメージが定着していくこととなる。

 穏やかな表情で歌うボーカル・ラインとは対象的に荒々しくかき鳴らされるアコースティック・ギター、これにオーバー・ダビングされるシタ−ル、隠し味的に加えられるベース・ギターとまたしてもタンバリンを起用したリズム・トラックなど、個々の面 白さはあるものの、この時期のビートルズとしては、曲全体を見通す音楽的なアイディアにおいてやや淡白な印象を免れない。むしろ、ジョンによる意味深長な歌詞が伝えるソングライターとしての成長ぶりに注目すべきナンバーの一つと言えよう。

"You Won't See Me"

 コマーシャル・ポップ的な印象を与えるポールの作品。ダブル・トラックによるポールのリード・ボーカルとジョンのお得意のパターンともいうべき独特のリズム・ギター、そしてシンバル部分をオーバー・ダビングした個性的なリズム・トラックによって曲の骨組みが構成される。しかしながら、この曲の魅力を引き出す重要なファクターの一つは冒頭から鳴り続けるピアノのトラックと考えられ、ポール自らが奏でるシンプルながらも独特の甘さを漂わせるピアノのフレーズは、ボーカル・ラインに対して多重旋律的な響きを聴かせながら、2コーラス目以降に加わるジョンとジョージのハーモニーに対し、その誘い水として機能している。

"Nowhere Man"

 ジョンの作品。主題部分はジョンの多重録音による三重唱で歌われるが、ミドル・パートではジョンがダブルトラックへ移行してメロディ・ラインを歌い、ポールとジョージがこれにハーモニーを重ねる。また、主題部分の中でもコーダで登場する最高音のコーラス・パートはポールが担当しているが、ハイトーンによるボーカルの美しさではポールに一歩を譲るとジョンが考えたためかもしれない。

 なお、この曲の中で驚くべき動きを見せるのはポールが弾くベース・ラインである。ボーカル・パートよりもアップテンポでリズムを刻むベース・プレイそのものがかなり珍しいと言えるが、その音数の多さを巧みに利用してコード・チェンジを先取りするかのようにメロディを牽引するベース・ラインの面 白さは、他の曲では容易に味わうことができない。

"Think For Yourself"

 ジョージの作品で、ジョ−ジ本人によるダブルトラック・ボーカルにジョンとポールがコーラスを加える。何と言ってもこの曲におけるイメージの決定要因は、ポールがオーバー・ダビングによって演奏する2本のベース・ギターであろう。2本のうちの1本はディストーションをかけたファズ・ベースだが、オクターブを違えてほぼ同じリフを繰り返しながら曲の全体像を造り上げていく2本のベース・ラインは、この曲の生命線と言ってよいほどの強烈な存在感を感じさせる。加えて、主題部分とミドル・パートで異なるリズムを刻むマラカスとタンバリンが、隠し味的な使われ方によってこの曲の魅力を陰ながら支えている。

"The Word"

 ジョンとポールが共作したと言われる作品で、二人が主題部分のリード・ボーカルを担当し、ジョージがコーラスで参加している。  主題部分は、スカ風の裏打ち的なリズム・ギターとこれに合わせてユニークな動きを見せるピアノ(演奏者はポール)、さらにはマラカスをも加えたリズム・パートによってかなりロック離れしたナンバーとの印象を与える。しかしながら、ミドル・パートへ進むと一転してジョンのシングルトラック・ボーカルがシャープな切れ味を聴かせるほか、これをサポートするベースとギターのフレーズも典型的なロックンロール調の展開へと変わっていく。

 この対象的な二つのパートが、間奏を一切はさむことなく交互に登場してスピーディに印象を切り替えるところにこの曲の面 白さがあると言えるだろう。また、エンディングでジョ−ジ・マーティン(3) がプレイするハーモニウムのソリッドなサウンドも、この曲のタイトな雰囲気にマッチしていて印象に残る。

"Michelle"

 前作「ヘルプ!」に収録された "Yesterday" とともに、ポールのメロディ・メイカーとしての才能が遺憾なく発揮された美しいバラッド・ナンバー。ポール自らがシングル・トラックによって全曲を歌い通 し、ジョンとジョージの二人がビートルズとしては過去に例がないほどのソフトで優美なコーラスを加えている。

 イントロのアコースティック・ギターによるアルペジオ (音階にそって一音づつ下降していくラインと、同じ音に留まり続けるパートが1拍おきに交互に繰り返されるという驚くべき展開を見せる。いわゆるクリシェ・ラインの一類型だが、初めて用いた作曲技法にしては出来過ぎの感さえある) と、これに歩調を合わせて下降するベース・ラインがこの曲のイメージを主導する。このアイディアは、ミドル・パートの最終部分で繰り返し使用されながら、コーダにおいて再び登場することによって曲の印象を完結させている。

 

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