ロック名曲セレクション



ミスター・ボージャングル
  ニッティー・グリッティー・ダート・バンド

なごみ
ダンス
ソウル

原題 Mr. Bojangles
リリース 1970年
作詞・作曲 ジェリー・ジェフ・ウォーカー
プロデュース ウイリアム・マッキューエン
演奏時間 3分36秒
収録アルバム 「アンクル・チャーリーと愛犬テディ」(リバティ・レコード/1970年)
ミュージシャン ジョン・マッキューエン(ギター、アコーディオン、バンジョー、マンドリン、ボーカル)、ジム・イボットソン(ギター、アコーディオン、コンガ、ドラムス、キーボード、ピアノ、ボーカル)、ジェフ・ハンナ(ギター、ドラムス、パーカッション、ウォッシュボード、ボーカル)、レス・トンプソン(ギター、ベース、マンドリン、ボーカル)、ジミー・ファッデン(ベース、ドラムス、ギター、ハーモニカ、ボーカル) [ 曲別のクレジットがないため、グループの正規のメンバーのクレジットのみをアルバム全体から引用。他の参加ミュージシャンについてはアルバム・ページをご参照 ]

 

[レビュー]

 ニッティー・グリッティー・ダート・バンドは、バーズフライング・ブリトウ・ブラザーズと並んで60年代後半の米国ロック界にカントリー・ロックの新たなトレンドを生み出した先駆的なロック・グループとして知られる。また、彼らは、ロック・ファンとカントリー・ファンの双方から支持を集め、二つの異なる音楽ジャンルが真にクロスオーバーするきっかけを作り出したという意味でもロック史上に重要な役割を果 たしたグループと言えるだろう。

 ニッティー・グリッティー・ダート・バンドの歴史は、オリジナル・メンバーのジェフ・ハンナ(ギター、ボーカル)とブルース・クンケル(ギター、ベース)が結成したフォーク・デュオ、ザ・ニュー・コースト・ツゥー("The New Coast Two")のスタートによってその幕を開ける。その後、ラルフ・バー(ギター、ベース)、レス・トンプソン(ボーカル、ベース、ギター他)、ジミー・ファッデン(ドラムス)、ジャクソン・ブラウン(ギター、ボーカル)が加わって1965年にニッティー・グリッティー・ダート・バンドが結成されるが、レコード・デビューを待つことなく離脱したジャクソン・ブラウンに代わりボーカル兼ギターを担当するジョン・マッキューエンが新たにグループに参加している。

 1967年にリバティ・レコードと契約したニッティー・グリッティー・ダート・バンドは同年にデビュー・アルバムの「ニッティー・グリッティー・ダート・バンド」を発表し、このアルバムからのシングル・ナンバー「雨を降らして」("Buy For Me The Rain"/作曲は元モンキーズのマイク・ネスミス)がヒットしてまずまずのスタートを切った。

 その後、「リコシェット」("Ricochet"/1967年)、「レアー・ジャンク」("Rare Junk"/1968年)の2枚のアルバムをリリースするものの、コマーシャルなヒットに恵まれなかったニッティー・グリッティー・ダート・バンドは、1970年に通 算4枚目のオリジナル・アルバム「アンクル・チャーリーと愛犬テディ」を発表する。

 カントリー・ロックの原形を感じさせつつも、彼らのルーツとも言うべきジャグ・バンド・スタイルとフォーク・ロック調のサウンドが支配的であった過去のアルバムと比較して、「アンクル・チャーリーと愛犬テディ」は、その選曲、サウンド、アレンジのいずれの側面 においてもカントリー・ロックの新たな息吹きを強く感じさせる楽曲で構成され、カントリー・ロック・バンドとしてのニッティー・グリッティー・ダート・バンドの個性を確立する彼らの出世作となった。

 本ナンバー「ミスター・ボージャングル」は、「サム・オブ・シェリーズ・ブルース」、「プー横丁の家」に続く「アンクル・チャーリーと愛犬テディ」からの3枚目のシングル・カット・ナンバーであり、リリース直後に全米シングル・チャートの第9位 にランク・インしたニッティー・グリッティー・ダート・バンドを代表するヒット曲である。

 曲は、アコースティック・ギターとパーカッションが生み出す軽快なワルツのイントロでスタートして、そのノリをそのまま受け継ぐかのようにリズミカルなボーカル・ラインへと導かれる。その後、曲の進行に応じてマンドリン、アコーディオン、ピアノ、バック・コーラスが次々と加わり曲のイメージを豊かに広げていくが、シンプルなカントリー風のワルツとして創作された原曲の美しさを損なうことなく、さりげない展開の中で艶やかに音色が増していくアレンジが見事である。

 また、曲名をリフレインするサビの部分ではドラムスを中心にリズム・トラックが前面 に出て曲の印象に変化を加えるが、いかにもロックンロールらしい躍動感に満ちたサビの部分と旋律やアレンジの美しさが聴き手を魅了する主題部分との二つのパートを組み合わせて創り上げられた「ミスター・ボージャングル」からは、カントリー風のサウンドを用いながらもベーシックなリズムのインパクトに力強さを感じさせるカントリー・ロックの魅力の一面 が十分に発揮されていると感じるのである。

 

[モア・インフォメーション]

 カントリーのトラディショナル・ソングに加え、バディ・ホリーランディ・ニューマンからクラシック音楽のクレメンティに至るまでの幅広い選曲をカントリー・タッチのロック・ナンバーとして蘇らせることでリスナーを魅了した「アンクル・チャーリーと愛犬テディ」は、ニッティー・グリッティー・ダート・バンドの代表作として高く評価されるとともに、カントリー・ロックの礎を築いた歴史的な名盤としてロック・ファンに愛聴されることになった。

 さらにニッティー・グリッティー・ダート・バンドは、1972年にカントリーの聖地とも言うべきナッシュビルへ赴き、カントリー、ブルーグラスの大御所的なミュージシャンであるロイ・エイカフ、メイベル・カーター、ドック・ワトソンらとともにLP3枚組のアルバム「永遠の絆」("Will the Circle Be Unbroken"/1972年)を制作する(CD化の際に2枚組へ変更)。

 自らが作り上げたカントリー・ロックの様式よりも、トラディショナルなカントリーやブルーグラスのスタイルをよりストレートに受け継ぐ姿勢でレコーディングされた「永遠の絆」は、ロックとカントリーの双方のファンから熱い支持を受けるとともに、二つの音楽ジャンルの絆の深さを文字どおり永遠に歌い上げるかのような美しい作品となった。ここに至ってニッティー・グリッティー・ダート・バンドは、カントリーとロック・ミュージックという二つの異なる音楽分野のクロスオーバーを真に成し遂げたと言ってよいであろう。

 なお、「ミスター・ボージャングル」のオリジネイターであるジェリー・ジェフ・ウォーカーは、1942年生まれ、米国ニューヨーク州オネアンタの出身。二十歳を過ぎた頃からフォーク系のミュージシャンとして活動を始め、1968年にアトランティック・レコード傘下のアトコ・レーベルと契約して「ミスター・ボージャングル」のシングル盤をリリース。さらに、同年には「ミスター・ボージャングル」を含む同名のアルバムを発表している。

 決してメジャーなヒットを記録したとは言えないジェリー・ジェフ・ウォーカーの「ミスター・ボージャングル」だが、ニッティー・グリッティー・ダート・バンドのほか、ボブ・ディランニルソン、ニーナ・シモンらがこの曲のカバー・バージョンを発表するなど、「ミスター・ボージャングル」はフォーク/カントリー・ロック史に残る名曲の一つとして多くのシンガーに歌い継がれている。

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