ロック名曲セレクション



ウィザウト・ユー
  ニルソン

なごみ
ダンス
ソウル

原題 Without You
リリース 1971年
作詞・作曲 ピート・ハム、トム・エヴァンス
プロデュース リチャード・ペリー
演奏時間 3分18秒
収録アルバム 「ニルソン・シュミルソン」(RCA/1971年)
ミュージシャン ハリー・ニルソン(ボーカル)、ジム・ケルトナー(ドラムス)、クラウス・ヴアマン(ベース)、ゲイリー・ライト(ピアノ)、ジョン・ウライブ(ギター)、ポール・バクマスター(ストリングス&ホーン・アレンジメント)

 

[レビュー]

 3オクターブを超える豊かな声域とユニークな作曲センスを駆使してロック史上に多くの名曲を残した個性派のシンガー・ソングライター、ニルソン(本名はハリー・エドワード・クリストファー・ニルソン)は、1941年6月にニューヨークのブルックリンに生まれた。

 1960年代の半ばに銀行員としての勤務の傍ら作曲活動を続けていたニルソンは、自身の作品がフィル・スペクターのプロデュースによるロネッツやモダン・フォーク・カルテットに取り上げられたことをきっかけに、1967年にRCAと契約し、デビュー・アルバム「パンデモニアム・シャドー・ショー」("Pandemonium Shadow Show")をリリースする。

 その後、セカンド・アルバム「空中バレー」("Aerial Ballet")からのシングル・ナンバー「うわさの男」(原題は "Everybody's Talkin'"。ダスティン・ホフマンが主演した米国映画「真夜中のカウボーイ」の主題歌としても知られる)のヒットや、スリー・ドッグ・ナイトがカバーした「ワン」("One")の全米チャート入りなどで人気を得つつあったニルソンは、ビートルズのジョン・レノンとポール・マッカートニーが「お気に入りのアメリカ人アーティスト」として当時のニルソンの名を挙げたことでさらにその評価を高めていく。

 そして、ニルソンの最大のヒット曲が、彼の6枚目のアルバム「ニルソン・シュミルソン」(1971年)からのシングル・カット・ナンバー「ウィザウト・ユー」によってもたらされる。アップル・レーベル所属の英国のロック・グループ、バッドフィンガーのナンバーをカバーした「ウィザウト・ユー」は、リリース直後に全米ヒット・チャートの第1位 に輝き、ニルソンの代名詞的な作品として知られる大ヒット・ナンバーとなった。

 本ナンバー「ウィザウト・ユー」は、ライブな残響を生かした美しいピアノ伴奏をバックに独白的に歌い出すニルソンのリード・ボーカルからスタートする。主題の第2フレーズからはボーカル・パートがダブル・トラックに変化してニルソン自身がバック・コーラスを重ね、クライマックスのサビの部分へと続いていく。

 サビの部分では2回目のフレーズで1オクターブ上の旋律へジャンプし、しっとりと落ち着いたムードで進んできた楽曲が一転してドラマティックな展開を見せる。その後に繰り返されるサビにおいてもニルソン自らがコーラスを担当して重奏的な美しさを引き立てつつ、ストリングスとホーンのハーモニーを駆使する印象的なフェード・アウトによるエンディングへと進んでいく。

 原曲のシンプルな構成と旋律の美しさをそのまま受け継ぎながらも、ニルソンならではの工夫を凝らしたアレンジが楽しめる「ウィザウト・ユー」は、カバー曲であるにもかかわらず、ニルソンの魅力を十二分に伝えるナンバーと言えるだろう。

 (なお、「ウィザウト・ユー」でベースを弾いているクラウス・ヴアマンについては、ビートルズ関連用語集(5) アストリッド・キルヒャーのページを参照されたい。また、この曲のストリングスとホーンのアレンジメントは、エルトン・ジョン作品のアレンジャーとしても知られるポール・バックマスターが担当している)

 

[モア・インフォメーション]

 「ウィザウト・ユー」のオリジネイターであるバッドフィンガーは、ボーカリストのピート・ハム、ベーシストのトム・エヴァンスを中心に結成され、1970年に「マジック・クリスチャン・ミュージック」をアップル・レーベルから発表してアルバム・デビューを飾っている。その後、1970年11月リリースのアルバム「ノー・ダイス」からのシングル・ナンバー「ノー・マター・ワット」がヒットして人気を得るが、本ナンバー「ウィザウト・ユー」のオリジナル・バージョンもアルバム「ノー・ダイス」の収録曲である。

 リリース当時から注目を集めていたとは言い難い「ウィザウト・ユー」のオリジナル・バージョンにニルソンが目をつけた経緯は不明だが、アップルを立ち上げたビートルズ・メンバーとニルソンとの交友関係が背景にあったことは事実であろう。

 なお、すでに記述したナンバーに加え、ニルソンが残した代表曲として、アルバム「ニルソン・シュミルソン」(1971年)からのシングル・ヒットとなった「ココナッツ」と「ジャンプ・イントゥ・ザ・ファイアー」、アルバム「ザ・ポイント」(1970年)に収録の「アローは友だち」、アルバム「ソン・オブ・シュミルソン」(1972年)に収録の「スペイスマン」などを挙げておきたい。

 1980年12月に起こったジョン・レノンの射殺事件にショックを受けたニルソンは、この時から銃規制のキャンペーンに多大なエネルギーを注ぎ込んでいくが、その後、長く患っていた心臓病が原因となって、1994年に惜しまれながらこの世を去っている。

 ・関連ページ ビートルズ関連アーティストのリンク集 その1へ(ニルソンの特集サイトとクラウス・ヴアマンのオフィシャル・サイトを含む)

 ・関連ページ ビートルズ関連アーティストのリンク集 その2へ(バッドフィンガーの特集サイトを含む)

 ・関連ページ ランディ・ニューマンのリンク集へ(ニルソンの特集サイトを含む)

 

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