ロック名曲セレクション


霧の8マイル
  ザ・バーズ

なごみ
ダンス
ソウル

原題 Eight Miles High
リリース 1966年
作詞・作曲 ロジャー・マッギン、デヴィッド・クロスビー、ジーン・クラーク
プロデュース アレン・スタントン
演奏時間 3分35秒
収録アルバム 「霧の5次元」(コロンビア/1966年)
ミュージシャン ロジャー・マッギン(ギター、ボーカル)、デヴィッド・クロスビー(ギター)、クリス・ヒルマン(ベース)、マイク・クラーク(ドラムス)、ジーン・クラーク(ボーカル)

 

[レビュー]

 米国フォーク・ロックあるいはカントリー・ロックの源流の一つを成したロック・グループのザ・バーズは、ロジャー・マッギン(ギターとボーカル/当初はジム・マッギンと名乗った)、ジーン・クラーク(ボーカル、ギター、タンバリン)、デヴィッド・クロスビー(ギター)、クリス・ヒルマン(ベース)、マイク・クラーク(ドラムス) の5人によって結成され、1965年にデビュー・アルバムの「ミスター・タンブリンマン」をリリースする。そして、このアルバムに収録されたボブ・ディラン作曲のシングル・ナンバー「ミスター・タンブリンマン」が全米チャートの第1位 に輝き、バーズは華々しいスタートを切ることとなった。

 続いて発表したセカンド・アルバム「ターン・ターン・ターン」(1965年)からの同名のシングル・カット・ナンバー(作曲はピート・シーガー)も全米チャートの第1位 を奪取し、バーズは、フォーク・ロックの第一人者としてその人気を確立する。

 当時のバーズは、フォーク・ロックの方角へ急転回を遂げつつあったボブ・ディランのフォロワーとして、フォーク・ソングの色彩 豊かな楽曲をエレキ楽器の導入によってロック・サウンドの中で組み立てるという手法を取りながらも、同時にビートルズの影響を感じさせる複雑で美しいコーラスをこれに加えることで独自の音楽性を打ち出していた。デビュー当初のバーズは、まさしく「ディランビートルズのハイブリッド」と表現するにふさわしいユニークなサウンドを創り上げていたのである。

 しかしながら、バーズの音楽性はサード・アルバムの「霧の五次元」(1966年/原題は "Fifth Dimension")において大きな変化を見せる。 このアルバムのなかでバーズは、従来のフォーク・ロック的なサウンドに加え、ドラッグ体験を連想させるサイケデリックなロックンロールを大胆に展開していく。そして、その変化を象徴的に表す作品が、アルバムに先駆けてシングル・リリースされた本ナンバー「霧の8マイル」である。

 「霧の8マイル」は、このグループの代名詞とも言えるロジャー・マッギンの12弦ギターによるイントロのソロ・プレイでスタートする。ただし、これまでのバーズ作品で聴くことのできた爽やかなギター・ソロとは異なり、調性を無視するかのようなきわめて複雑で不協和音的な響きをもたらすギター・フレーズが用いられている。直後にボーカル・パートがスタートしてバーズらしさに溢れた美しいコーラス・ワークが楽しめるものの、この部分でもドラムスを中心にリズム・トラックはかなり複雑な動きを見せており、この曲のサイケデリックな性格を強く印象づける。

 イントロに登場するギター・ソロは間奏とコーダの部分でも繰り返し使用され、この曲全体のイメージを作り上げるうえでの決定的な役割を果 たしている。ロジャー・マッギン自身は、このギター・プレイについて「ジョン・コルトレーンとインド音楽の双方から影響を受けた」と語っているが、モダン・ジャズの先鋭性と東洋音楽にヒントを得たクラシックな音階からの離脱の試みが相互に影響し合うことでこの曲の先進性を生み出したと言えるだろう。

 なお、「霧の8マイル」は、当時のラジオ局がドラッグ体験を連想させるとの理由で放送を禁止したために、全米のヒットチャートにおいては第14位 までの上昇にとどまっている。

 

[モア・インフォメーション]

 アルバム「霧の五次元」は、「霧の8マイル」のほかにも、アルバムのタイトル・ナンバーや「アイ・シー・ユー」、「ジョン・ライリー」のようなサイケデリック・サウンドを特徴づける楽曲を多く含み、バーズのロック・グループとしての音楽性の変化を如実に物語る作品となった。

 (グループのオリジナル・メンバーであり、「霧の8マイル」の作者にも名を連ねるジーン・クラークは、「霧の8マイル」のシングル盤のリリース直後にグループを脱退している。従って、「霧の五次元」は残った4名を正規のメンバーとしてリリースされているが、ジーン・クラークはセッション・ミュージシャンとしてこのアルバムのレコーディングに参加し、ボーカル、タンバリン、ハーモニカをプレイしている)

 フォーク/サイケデリック・ロックに加え、バーズは、グラム・パーソンズをメンバーに迎えたアルバム「ロデオの恋人」(1968年)でカントリー・ロックに先鞭をつける。(所属するレコード会社間の法律上のトラブルのため、グラム・パーソンズがレコーディングに参加したトラックは、アルバムのリリース直前にその多くがカットされたと言われる。なお、グラム・パーソンズは、このアルバムの中でシンガー及びギタリストとしてクレジットされている)

 その後、バーズを離れたグラム・パーソンズとクリス・ヒルマンは、ギタリストのスニーキー・ピートらとともにフライング・ブリトウ・ブラザースを結成し(一時的にマイク・クラークも参加)、「黄金の城」(1969年)などのアルバムを発表することでカントリー・ロックの表現様式を完成に導くこととなる。

 なお、バーズは1991年にロックの殿堂入り(The Rock and Roll Hall of Fame)を果たしている。

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