フロム・ザ・ビギニング | |
エマーソン、レイク&パーマー |
なごみ
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ダンス
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ソウル
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原題 | From The Beginning |
リリース | 1972年 |
作詞・作曲 | グレッグ・レイク |
プロデュース | グレッグ・レイク |
演奏時間 | 4分13秒 |
収録アルバム | 「トリロジー」(アイランド/1972年) |
ミュージシャン | キース・エマーソン(オルガン、ピアノ、シンセサイザー)、グレッグ・レイク(ボーカル、ベース、ギター)、カール・パーマー(パーカッション)[アルバム全体のクレジットを転記] |
[レビュー]
ナイスを率いていたキース・エマーソン(キーボード)、キング・クリムゾンでリード・シンガー兼ベーシストを務めていたグレッグ・レイク、アトミック・ルースターの一員だったカール・パーマー(ドラムス)の三人によって結成されたエマーソン、レイク&パーマーは、イギリスのプログレッシブ・ロック界が生んだ最初のスーパー・グループと呼ばれ、また、それまで難解なイメージがつきまといがちだったプログレッシブ・ロックを一般 のリスナーに広く知らしめるうえで大きな役割を果たしたロック・ユニットである。
エマーソン、レイク&パーマーの結成のきっかけは、驚異的なテクニックを駆使するキーボード・プレーヤーとしてナイス時代からプログレ・ロック界のヒーロー的な人気を誇っていたキース・エマーソンが、米国ツアー中のフィルモア・ウエストへのライヴ出演をきっかけにキング・クリムゾンのグレッグ・レイクと知り合ったことにある。
ナイス時代に「少年易老学難成」("Ars Longa Vita Brevis"/1969年)や「組曲『五つの橋』」("Five Bridge Suite"/1970年)などのプログレ色の強いアルバムを創り上げつつも強力なボーカル・ラインの不在にフラストレーションを感じていたキース・エマーソンは、グレッグ・レイクと新グループの結成について話し合い、意気投合した二人はドラマーのカール・パーマーを加えてエマーソン、レイク&パーマーをスタートさせる。
1970年11月にデビュー・アルバムの「エマーソン、レイク&パーマー」("Emerson, Lake & Palmer")を発表した彼らは、このアルバムからのシングル・ナンバー「ラッキー・マン」がスマッシュ・ヒットを記録するとともに、アルバムそのものも全米チャートの第18位 に入るヒットとなって華々しいスタートを切る。
その後、組曲形式の大曲を含む「タルカス」("Tarkus"/1971年)やムソルグスキーを題材とする「展覧会の絵」("Pictures At An Exhibition"/1971年)といった個性的なアルバムをリリースしてその人気と評価を高めていくエマーソン、レイク&パーマーは、1972年に彼らの第4作目となるアルバムの「トリロジー」を発表する。人気、創作面 ともに絶頂期を迎えていたエマーソン、レイク&パーマーの自信と円熟味に溢れる「トリロジー」は、深い叙情性と華麗に疾駆するキース・エマーソンのキーボードを中心に彼らの独創性が遺憾なく発揮された傑作アルバムと言えるだろう。
本ナンバー「フロム・ザ・ビギニング」は、アルバム「トリロジー」からシングル・カットされて全米ポップ・チャート入りを記録したスマッシュ・ヒット・ナンバーであり、エマーソン、レイク&パーマーを代表する曲目の一つである。
曲は、メランコリックな色彩を帯びたアコースティック・ギターのイントロで始まり、ギター、ベース、パーカッションの重奏に支えられて独特の深いエコーを響かせるグレッグ・レイクのボーカル・パートへと引き継がれる。曲の後半においてはエレクトリック・ギターとシンセサイザーの独奏パートがボーカルと入れ替わってメロディ・ラインを受け持つが、いつもは華やかな速弾きを披露するキース・エマーソンのシンセサイザーもここでは曲全体のムードに歩調を合わせるかのように穏やかでエレガントなプレイに終始している。
エマーソン、レイク&パーマーの楽曲は、キース・エマーソンの超絶技巧とも言うべきキーボード・ソロを中心とするクラシカルあるいはジャズ色の強い作品と、グレッグ・レイクのアコースティックで叙情的な作風が支配する作品の二つに大きく分けられるが、本ナンバー「フロム・ザ・ビギニング」は明らかに後者に属するとともに、グレッグ・レイク作曲による初期のヒット・ナンバー「ラッキー・マン」と同じくその一面 においてエマーソン、レイク&パーマーの音楽的な魅力を知らしめる彼らの代表作と言うことができるだろう。
[モア・インフォメーション]
アルバム「トリロジー」には、「フロム・ザ・ビギニング」に加え、キース・エマーソンの主導のもとで創作された彼らの代表曲「ホウダウン」("Hoedown")が収録されている。20世紀のアメリカ音楽を代表する作曲家、アーロン・コープランドの主題を用いた「ホウダウン」は、エマーソンの驚異的なテクニックによるオルガン・ソロを主軸に据えたグループの自信作であり、また、70年代初頭のイギリスで勃興したプログレッシブ・ロック・ムーブメントを象徴する楽曲の一つと言えるだろう。
エマーソン、レイク&パーマーは、その後に自らのレーベル「マンティコア」を立ち上げ、1973年に同レーベルからの最初のアルバム「恐怖の頭脳改革」("Brain Salad Surgery")を発表する。「恐怖の頭脳改革」はLP時代のA面後半からB面 の全体を費やす大曲の「悪の教典#9」を含み、個々の演奏パートにおける高度なテクニックに加え、アルバム全体の構成力とこれを支えるアイディアの側面 においても高い評価を受けることでエマーソン、レイク&パーマーの最高傑作と呼ばれるアルバムとなった。
その後、メンバー各自のソロ活動への意識の高まりなどを背景に1979年にはグループの解散に至るエマーソン、レイク&パーマーだが、カール・パーマーがイエスのスティーヴ・ハウ(ギター)、元キング・クリムゾンのジョン・ウェットン(ベース、ボーカル)らとともにスーパー・グループと呼ばれるエイジアを結成して多くのヒット曲を放ったほか、キース・エマーソンとグレッグ・レイクがジェフ・ベック・グループ他でプレイ経験のあるドラマーのコージー・パウエルを加えて新ユニットのエマーソン、レイク&パウエルを立ち上げるなどの活躍が続く。
そして、1991年にはオリジナル・メンバーの三人が再び顔を合わせてエマーソン、レイク&パーマーが再結成され、彼らは久方ぶりのアルバム「ブラック・ムーン」("Black Moon")をリリースする。「ブラック・ムーン」は全米のアルバム・チャートで第78位 にランク・インするなど、エマーソン、レイク&パーマーの健在ぶりを示すヒット・アルバムとなったのである。
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