ロック名曲セレクション


ゲット・イット・オン
  T.レックス

なごみ
ダンス
ソウル

原題 Get It On
リリース 1971年
作詞・作曲 マーク・ボラン
プロデュース トニー・ヴィスコンティ
演奏時間 4分26秒
収録アルバム 「電気の武者」(ポリグラム/1971年)
ミュージシャン マーク・ボラン(ボーカル、ギター)、ミッキー・フィン(パーカッション)、スティーブ・カリー(ベース)、ビル・リジェンド(ドラムス)、リック・ウェイクマン(キーボード)、イアン・マクドナルド(サックス)、バート・コリンズ(ホルン)、ハワード・ケイラン(コーラス)、マーク・ヴォルマン(コーラス)

 

[レビュー]

 デヴィッド・ボウイと並んでグラム・ロック・ヒーローの双璧と称されるマーク・ボランは、1947年9月、英国のロンドンに生まれた。

 パーカッショニスト、スティーブ・トゥックとのコンビでティラノサウルス・レックスと名乗るアコースティック色の強いロック・バンドを結成し、アンダーグラウンドな人気を得ていたマーク・ボランだが、3枚のアルバムを残して1969年にこのコンビを解消。マークは、新パートナーとなるミッキー・フィンとともにグループ名を短縮したT.レックスをスタートさせる。

 一転して大胆なエレクトリック・サウンドを導入したT.レックスは、1970年までに「ライド・ア・ホワイト・スワン」と「ホット・ラヴ」の2曲をヒットさせるなど(「ホット・ラヴ」は英国チャートの第1位 を獲得)、英国のロック・シーンにおいてその頭角を現すこととなった。

 そして、スティーブ・カリー、ビル・リジェンドを迎えたフル・メンバーによる顔ぶれとともに、T.レックスがその人気と存在感を揺るぎないものとした作品が1971年にリリースされたT.レックス名義のセカンド・アルバム「電気の武者」(原題は "Electric Warrior")であり、同アルバムに先駆けて発表されたシングル曲が本ナンバーの「ゲット・イット・オン」である。

 「ゲット・イット・オン」は、リリースと同時に英国での爆発的なヒットを記録し、当然のごとくチャートの第1位 を奪取する。また、米国のヒット・チャートにおいても「バング・ア・ゴング」のタイトルで第1位 に輝くなど、米国の音楽マーケットにおけるT.レックスの最大のヒット・ナンバーとなった。

 曲は、シンプルなメロディながら、ブギー・ロックとも呼ばれる独特のリズム感とマーク・ボランの個性的なボーカル・ラインによって聴き手に忘れ難い印象を残す。リズム・セクションの中核を成すものはギターとドラムスだが、曲全体にわたってオブリガート的に挿入される2本の管楽器がそれ以上の存在感を放っている。

 すなわち、従来のロック・サウンドの中ではエレクトリック・ギターが担うことの多かったカッティング・プレイによるリズムのアクセントを、この曲においてはホルンとサックスの2本のブラス楽器が担当しているのであり、このことが、この曲の独特のリズム感を生み出すとともに、聴き手に華やかな印象を与えるこの曲のサウンド面 での特徴を構成する一因となり得ている。 

 1971年2月に行われたT.レックスの初めてのコンサートで、金のラメ入りスーツを着て登場したマーク・ボランはそのいでたちによって聴衆を驚かせたと伝えられるが、そのファッションのみならず、サウンド面 においてもグラマラスなロックの歴史の幕を開けたという意味で、「ゲット・イット・オン」はロック・ファンの記憶にとどめられるべきナンバーと言えるだろう。

 

[モア・インフォメーション]

 「ゲット・イット・オン」を含むアルバム「電気の武者」には、ティラノサウルス・レックス時代を彷佛とさせるアコースティック系の美しいナンバー(「コズミック・ダンサー」や「ガール」)、ブギー・ロック系のナンバー(「マンボ・サン」や「ジープ・スター」など)、また、マーク・ボランの音楽的ルーツをうかがわせるブルース色の濃いナンバー(「リーン・ウーマン・ブルース」など)がバランスよくちりばめられ、あたかもT.レックスの過去から未来に至る音楽面 での軌跡を垣間見せているかのような印象がある。

 T.レックスは、その後も「テレグラム・サム」(1972年)、「メタル・グルー」(1972年)、「20th センチュリー・ボーイ」(1973年)などのヒット曲を相次いで生み出すが、絶頂期を過ぎた1976年にグループは解散する。

 マーク・ボランは、1977年に新たなメンバーとともにT.レックスを再スタートさせるが、同年9月の自動車事故によって帰らぬ 人となる。マーク・ボランの早過ぎる死によって(享年29歳)、T.レックスの歴史は完全な終幕を迎えるのである。

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