サンシャイン・スーパーマン | |
ドノヴァン |
なごみ
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ダンス
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ソウル
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原題 | Sunshine Superman |
リリース | 1966年 |
作詞・作曲 | ドノヴァン |
プロデュース | ミッキー・モスト |
演奏時間 |
3分17秒 |
収録アルバム | 「サンシャイン・スーパーマン」(エピック/1966年) |
ミュージシャン | ドノヴァン(ボーカル、ギター)、エリック・フォード(ギター)、ジミー・ペイジ(ギター)、スパイク・ヒーリー(ベース)、ボビー・レイ(ベース)、ファースト・エディ・ホー(ドラムス)、ボビー・オール(ドラムス)、シェイラ・フィリップス(シタール) [曲別のクレジットがないため、アルバム全体のインフォメーションより使用楽器の情報を転記] |
[レビュー]
ドノヴァン(本名はドノヴァン・フィリップ・レイチ)は、主に60年代後半の英国のロック・シーンでフォーク、サイケデリックの色彩 豊かなロック・ミュージックを展開し、米国のウエストコーストに触発されて沸き起こったイギリスのフラワー・ムーブメントのなかで、その中心的な役割を担ったシンガー・ソングライターである。
1946年、スコットランドのグラスゴーに生まれたドノヴァンは、1965年にシングル・レコード「キャッチ・ザ・ウインド」をヒッコリー・レーベルからリリースしてレコード・デビューを飾る。さらに、セカンド・シングルの「カラーズ」が英国内でヒットしたドノヴァンは、フォーク色が色濃く漂う自らのソングライティングの特徴によって「イギリスのボブ・ディラン」と称される存在となる。
また、この年に米国へ招かれ、ニューポート・フォーク・フェスティバルへ出演することで英国ロック界を代表するフォーク系シンガーとしてのイメージを一段と高めつつあったドノヴァンだが、翌年の1966年にリリースしたアルバム「サンシャイン・スーパーマン」によって、彼は自らのロック・ミュージシャンとしてのイメージを大きく変化させていく。
アニマルズやヤードバーズ(エリック・クラプトン、ジェフ・ベックらが在籍したことで有名)の育ての親として知られるミッキー・モストをプロデューサーに迎えて制作されたドノヴァンの通 算3枚目のアルバム「サンシャイン・スーパーマン」は、シタール、ハープシコードなど従来のロックンロールではほとんど使用されたことのない楽器を多用し、また、東洋的な旋律と音色を大胆に取り入れることでサイケデリック色を強く打ち出すアルバムとなった。
ここに至ってドノヴァンは、ボブ・ディランの模倣者の一人という従来からの周囲の評価を完全に脱し、サイケデリック・フォークとでも呼ぶべき英国ロック界におけるニュー・ジャンルの創造者としてその第一歩を踏み出すことになったのである。
本ナンバー「サンシャイン・スーパーマン」は、アルバム「サンシャイン・スーパーマン」からシングル・カットされて英米双方のヒット・チャートで第1位 に輝いた大ヒット・ナンバーである。また、この曲は、ドノヴァンがシンガー・ソングライターとして自らの新たなキャラクターを確立するうえで決定的な役割を果 たした作品とも言えるだろう。
曲は、ベースと打楽器による重壮なリズム・トラックでスタートして直後にシタールとリズム・ギターの伴奏へと受け継がれる。ドノヴァンによるボーカル・パートの開始後、しばらくはイントロからのリズム・セクションにリズム・ギターが加わるだけのシンプルな構成で曲は進むが、やがて再び登場するシタールがボーカル・ラインへユニゾン的な旋律を重ねることで、ボーカル、シタール、エレキ・ギターの三者による複雑な重奏が重みのあるリズム・トラックの上を走り始める。
シタールという当時のロック・ミュージックにおいてはかなりユニークな音色を用いながらも、東洋的なサウンドをストレートに連想させる楽風に容易に飛びつくのではなく、西洋の伝統的なハーモニーの中で新たな仕掛けを施すアイディアの一つとしてインド楽器のシタールを使用したところに、この曲の魅力の一面 が見い出されるように思う。
オーソドックスなブルース・スタイルのリード・ギターとサイケ色をまとったリズム・ギターの対比の面 白さも含め、本ナンバー「サンシャイン・スーパーマン」は、英国のトラッド・フォーク的なロックからフラワー・ムーブメントにつながるサイケデリック・ロックへの橋渡しをおこなった歴史的な意義を有する名曲と考えられるのではないだろうか。
[モア・インフォメーション]
アルバム「サンシャイン・スーパーマン」は、すでに述べたとおりドノヴァンのミュージシャンとしてのキャラクターの変化を強く印象づける作品となったが、それを象徴する収録曲として「サンシャイン・スーパーマン」のほかに「3羽のかわせみ」と「魔女の季節」の2曲を挙げておきたい(いずれも「サンシャイン・スーパーマン」と並ぶドノヴァンの代表曲である)。
「3羽のかわせみ」は、ボーカルとシタールの東洋的な旋律に打楽器の複雑な動きが絡む序盤の展開が面 白く、また、バイオリンとハープシコードが奏でる音色豊かなハーモニーがその美しさを際立たせるナンバーである。一方、ヴァニラ・ファッジやアル・クーパーのカバーでも知られる「魔女の季節」は、シャープなリズム・ギターの伴奏とともにドノヴァンのボーカルがいつになくハードなシャウトを響かせるブルース・ロック風の作品だが、鋭いカッティングによる前半のソリッドな曲の印象に対して後半から挿入されるキーボードのジャジーな旋律が作品全体のイメージに新たな息吹を吹き込んでいる。
ドノヴァンは、「サンシャイン・スーパーマン」に続いてアルバム「メロー・イエロー」(1966年)を発表し、この作品からのシングル曲「メロー・イエロー」が再びヒット・チャートの第1位 を獲得する。また、1969年には、ジェフ・ベック、ロッド・スチュワート、ロン・ウッドらのサポートを得て、アルバム「バラバジャガル」(原題は "Barabajagal")をリリースするなどの活躍が続く。
その後、70年代の後半から80年代にかけて、かつてのエネルギッシュな創作活動がややその勢いを失ったかに見えたドノヴァンだが、1998年にはレッド・ホット・チリ・ペッパーズらのアルバム制作で実績のあるリック・ルービンをプロデューサーに起用し、久方振りのアルバム "Sutras" を発表してロック・シーンの最前線へ返り咲いている。
・関連ページ ボブ・ディランのリンク集の関連アーティストへ(ドノヴァンの特集サイトを含む)
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