ハッシュ | |
ディープ・パープル |
なごみ
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ダンス
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ソウル
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原題 | Hush |
リリース | 1968年 |
作詞・作曲 | ジョー・サウス |
プロデュース | デレク・ローレンス |
演奏時間 | 4分23秒 |
収録アルバム | 「ハッシュ」(テトラグラマトン/1968年) |
ミュージシャン | ロッド・エヴァンス(ボーカル)、リッチー・ブラックモア(ギター)、ジョン・ロード(キーボード、ボーカル)、ニック・シンパー(ベース、ボーカル)、イアン・ペイス(ドラムス) |
[レビュー]
ロック史上にその名を轟かすハード・ロック・バンドのディープ・パープルは、1968年にイギリスのハートフォードで結成され、同年にアルバム「ハッシュ」をリリースしてレコード・デビューを飾った。結成時のメンバーは、ロッド・エヴァンス(ボーカル)、リッチー・ブラックモア(ギター)、ジョン・ロード(キーボード)、ニック・シンパー(ベース)、イアン・ペイス(ドラムス)の5人。
その後、「詩人タリエシンの世界」(1969年/"The Book Of Taliesyn")、「ディープ・パープルIII」(1969年/"Deep Purple")とハード・ロック風のサウンドの中にもポップでクラシカルなセンスがきらめくアルバムをリリースし続けたディープ・パープルは、1969年のメンバー交代(離脱したロッド・エヴァンス、ニック・シンパーに代わり新メンバーとしてボーカリストのイアン・ギラン、ベーシストのロジャー・グローバーが参加)を機にグループの音楽性を一新する。1970年リリースのアルバム「イン・ロック」("Deep Purple In Rock")を皮きりにハード・ロックの王道を歩み始めた新生ディープ・パープルは、1972年に発表したアルバム「マシン・ヘッド」の成功によってハード・ロック・サウンドの様式美を完成に導くこととなる。
本ナンバー「ハッシュ」は、ディープ・パープルのデビュー・アルバム「ハッシュ」の収録曲であり、このアルバムからシングル・カットされて全米ヒット・チャートの第4位 へランク・インしたディープ・パープルの記念すべき最初のヒット・ナンバーである。 (「ハッシュ」の作曲者である米国出身のシンガー・ソングライター、ジョー・サウスは、1969年に「孤独の影」により最優秀楽曲部門のグラミー賞を受賞している)
すでに述べたとおりデビュー直後のディープ・パープルは、メタリックなギター・サウンドを中心にハード・ロック色の濃厚なサウンドを展開しつつも、ジョン・ロードのクラシック風のオルガン・ソロやロッド・エヴァンスの叙情的な美しさにあふれるボーカル・ラインなどポップ色の強いキャッチーなロック・サウンドをもその特徴としていた。その意味で、本ナンバー「ハッシュ」は、当時のディープ・パープルを代表するヒット曲であるとともに、デビュー当初のグループの音楽性を象徴するナンバーと言えよう。
曲は、狼の遠吠えを思わせるサウンド・エフェクトでその幕を開け、ジョン・ロードのリズミックなキーボードによるイントロ・パートへと引き継がれる。その後にロッド・エヴァンスのメロディアスなコーラス部分がスタートして本編が開始されるが、曲の印象としては旋律そのものがシンプルなうえに全体のアレンジにおいてもかなりダンサブルなナンバーとのイメージが強い。
その一方では、フレーズよりもメタル系のサウンドそのもので勝負を挑むかのようなリッチー・ブラックモアのギターやアグレッシヴなイアン・ペイスのドラムス、また、周囲の喧噪と関わりなく力強い低音のラインを刻むニック・シンパーのベースなど、個々の音楽表現においては後のヘヴィ・メタル系のハード・ロックに繋がるルーツ的なエレメントがすでにその顔をのぞかせている。
なお、同時期に活躍したヴァニラ・ファッジのようなハード・ロック・バンドと比較した場合のディープ・パープルの音楽上の特徴は、タメを効かせることなくストレートに放つロックのリズムや純粋な和音を追求して直線的に進むコーラスなど、黒人音楽からの影響がきわめて微少である点に見い出される。黒人音楽の影響下にあった同時代の多くのロック・バンドとは異質の音楽性を象徴するこれらのキャラクターの中にも、その後に純然たるハード・ロックの道を切り開くディープ・パープルの運命がすでに示唆されていたかのように感じられる。
本ナンバー「ハッシュ」は、ポップでクラシックな音楽要素との融合によってデビュー当初のディープ・パープルだけが生み出し得たハード・ロックのユニークな美しさを描き出しているとともに、イアン・ギラン加入後のこのグループが創り上げるメタル系ハード・ロックの王道に通 じる一面をも同時に指し示していると言えるだろう。
[モア・インフォメーション]
ディープ・パープルのデビュー・アルバム「ハッシュ」には、クリームの名演で知られるスキップ・ジェイムスの「アイム・ソー・グラッド」やビートルズ・ナンバーの「ヘルプ」など、異色と言っていいほどの選曲によるナンバーが収録されている。特にレノン&マッカートニー作品の「ヘルプ」においては、ロッド・エヴァンスのボーカルがその叙情的な美しさを遺憾なく発揮し、ビートルズ系のサウンドを好むリスナーにも十分に受け入れられるような音楽世界が作り上げられている。
グループのリード・シンガーがロッド・エヴァンスからイアン・ギランに交代したことでバンドの音楽性が大きく変化したことはすでに述べたとおりだが、信じ難いほどのハイトーンでシャウトできるイアン・ギランの登場によってグループの目指すハード・ロック志向のサウンドがその形を成し始めたことは間違いないところであろう。
ディープ・パープルは、イアン・ギラン加入後のアルバム「イン・ロック」(1970年)と「ファイアボール」(1971年)でハード・ロック路線を押し進め、1972年発表のアルバム「マシン・ヘッド」の大ヒットによりその音楽スタイルを確立する。また、「マシン・ヘッド」からは「ハイウェイ・スター」と「スモーク・オン・ザ・ウォーター」の2大ヒット・シングルが生まれ、コマーシャルな側面 においてもグループにとって最も大きな成功を収めた作品となった。
なお、ハード・ロック路線を完成に導くうえでグループの実質的なリーダーとして大きな役割を果 たしたギタリストのリッチー・ブラックモアは、アルバム「嵐の使者」(1974年/"Stormbringer")を最後にディープ・パープルを脱退し、ハード・ロック・バンドのレインボーを結成する。レインボーは、1981年の「アイ・サレンダー」("Difficult To Cure")、1982年の「闇からの一撃」("Straight Between The Eyes")などのヒット・アルバムを生み出し、70年代半ばから80年代にかけてのハード・ロック界を代表するグループとして一時代を築いている。
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