ビートルズが主演する初めての長篇映画「ア・ハード・デイズ・ナイト」(日本公開時のタイトルは「ビートルズがやって来る ヤァ! ヤァ! ヤァ!」) は、1964年7月6日の夜にロンドン・パビリオン劇場で封切られた。
エルビス・プレスリーに象徴される従来のアイドル・ムービーが、青空のもとで展開される恋と青春のドラマといったお決まりのパターンを踏襲していた当時において、この映画は全くの異彩 を放つものであったと言われる。
映画「ア・ハード・デイズ・ナイト」には、スラップスティック・コメディの要素がふんだんに盛り込まれ、また、ハンディ・カメラを多用して撮影された斬新な映像の数々や、めまぐるしい場面 転換を無理なくリズミカルに繋ぎあわせる編集手法からは、ヌーヴェルバーグによる影響が強くうかがわれると批評された。
プロデューサーのウォルター・シェンソンによって監督に抜てきされたリチャード・レスターは、わずか6週間半という短い時間の中で撮影を完了させ、映画は撮影の開始から3ヶ月を経ただけで公開に至るという本編の内容さながらのスピーディなテンポの中で制作されている。
映画のストーリーは、ポール・マッカートニーの祖父 (演じる俳優はウィルフレッド・ブランベル) が引き起こすトラブルの数々と、これと奮闘するビートルズ以下のスタッフを描く前半部分、及び、失踪したリンゴをめぐって、テレビ収録のためのライブ・ステージに間に合うか否かをスリリングに描く後半部分とに大別 される。
エピソードの合間に挿入されるジョンとマネージャーとの神経バトル (マネージャーの一人が「これはジョンとの神経戦だ」と言うと、もう一人のマネージャーから「彼には神経がない」と言い返されるシーンは笑える)、また、ジョ−ジがオーディションの応募者と間違えられるくだりなども含め、脚本家のアラン・オーウェンが担当したシナリオも、この映画が高い評価を受ける理由の一つである。(アラン・オーウェンは、この映画によって1964年度アカデミー賞の脚本部門にノミネートされた)
この映画において音楽監督を務めたのは、ビートルズの同名アルバムをプロデュースしたジョ−ジ・マーティンである。ジュリアス・ファスト著の「ビートルズ」(池ひろあき訳・角川文庫) は、この映画の音楽について、「いくつかの曲は、まったく別種の画面に対し、対位 法的にサウンドトラックの効果をあげている」とのロンドン・タイムズの批評記事を紹介している。
加えて、監督のリチャード・レスターが自ら脇役で顔をのぞかせているほか、後にジョージ・ハリスンの妻となるパティ・ボイドが女優として出演するなど、話題性には事欠かない作品である。(ジョージはこの映画の撮影中にパティと知り合い、後に結婚に至っている)
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