ロック名曲セレクション


ワン・ラブ / ピープル・ゲット・レディ
  ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズ

なごみ
ダンス
ソウル

原題 One Love / People Get Ready
リリース 1977年
作詞・作曲 ボブ・マーリー、カーティス・メイフィールド
プロデュース ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズ
演奏時間 2分52秒
収録アルバム 「エクソダス」(アイランド/1977年)
ミュージシャン ボブ・マーリー(ギター、ボーカル、パーカッション)、ジュニア・マーヴィン(ギター)、アストン・バレット(ギター、ベース、パーカッション)、タイロン・ダウニー(キーボード、パーカッション、ボーカル)、カールトン・バレット(ドラムス、パーカッション)、リタ・マーリー(ボーカル)、ジュディ・モワット(ボーカル)、マルシア・グリフィス(ボーカル)[アルバム全体のクレジットを転記]

 

[レビュー]

 レゲエの王様と呼ばれ、また、ジャマイカのローカル・ミュージックに過ぎなかったレゲエを全世界に知らしめたアーティストとしてポップス史上にその名を残すボブ・マーリー(本名はロバート・ネスタ・マーリー)は、1945年2月に白人の父親と黒人の母親を持つ混血の少年としてジャマイカ北部の地方都市セント・アンに生まれた。

 14歳の若さで首都のキングストンへ赴きミュージシャンとしての自立を目指していたボブ・マーリーは、1962年にロバート・マーリー名義によるシングル「ジャッジ・ノット」をリリースしてレコード・デビュー。さらに翌年の63年にはピーター・トッシュ、バーニー・リビングストンらとともにザ・ウェイラーズを結成してジャマイカのローカル・バンドとしての活動を開始する。

 やがて、アイランド・レコードのオーナー、クリス・ブラックウェルに見い出された彼らはアイランドと契約してアルバム「キャッチ・ア・ファイア」("Catch A Fire"/1973年)をリリースし、ここに至ってボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズはようやくグローバル・マーケットへのメジャー・デビューを果 たすこととなった。また、直後にアイランドからのセカンド・アルバム「バーニン」("Burnin'"/1973年)に収録されたシングル・ナンバー「アイ・ショット・ザ・シェリフ」のカバー・バージョンをエリック・クラプトンがヒットさせた影響もあって、ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズは世界の音楽マーケットの注目を集めるところとなる。

 本ナンバー「ワン・ラブ / ピープル・ゲット・レディ」(以下「ワン・ラブ」と略す)は、1977年にリリースされたアイランドからの6枚目のアルバム「エクソダス」の収録曲である。このアルバムからシングル・カットされたわけではないものの、「ワン・ラブ」は、その音楽的なクオリティの高さとともに愛と平和を希求するテーマの普遍性が支持を集めてボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズを象徴する彼らの代表曲として扱われている。

 曲は、リズム・パートを構成する高、中、低音の3本のキーボードとパーカッションが刻むレゲエ特有のリズミックなイントロでスタートし、ボブ・マーリーとボブの妻、リタ・マーリーを中心とする女性コーラスによるサビのボーカル・ハーモニーへと受け継がれる。直後にボブのリード・ボーカルが「ピープル・ゲット・レディ」の主題へ転じて曲は新たな様相を見せるが、この部分においても基本となるコード・パターンとバックを彩 る女性コーラスには大きな変化がなく、この作品が一貫して既成曲である「ピープル・ゲット・レディ」からの変奏的なアレンジのもとで生み出されたナンバーであることを印象づける。

 (カーティス・メイフィールドが作詞・作曲した「ピーブル・ゲット・レディ」は、カーティスが率いたソウル・グループ、インプレッションズの代表曲であるとともに、ジェフ・ベックアレサ・フランクリンヴァニラ・ファッジロッド・スチュワートらのロック及びソウル界のトップ・スター達が繰り返しカバーしたポップス史上の屈指の名曲である。なお、「ワン・ラブ」における「ピープル・ゲット・レディ」の引用は旋律部分にとどまり、歌詞についてはボブ・マーリーのオリジナルに改変されている)

 ボブ・マーリーの創作上の魅力の一つとして、ボーカルの主旋律に加え、キーボード、ギター、ベース、バック・コーラスを駆使して生み出される多重的なハーモニーの美しさを挙げることができる。既成曲の旋律とそのコード展開を引用しながらも、オリジナリティにあふれるバック・コーラスとレゲエ特有のリズム感に基づくアレンジを加えて創り上げられた「ワン・ラブ」はボブ・マーリーのクリエイターとしての魅力とその特徴が十分に表現された彼の代表曲と結論づけられるのではないだろうか。

 

[モア・インフォメーション]

 アルバム「エクソダス」からは、タイトル・ナンバーの「エクソダス」と「ウェイティング・イン・ヴェイン」の2曲がシングル・カットされ、いずれもブラック・ミュージックの全米チャートで上位 へ躍進するヒット・ナンバーとなった。また、「エクソダス」は、「ワン・ラブ」のほかにも、ボブ・マーリー作品における屈指のラブ・バラッド「そっと灯りを消して」やダンサブルなナンバーの「ジャミング」などファンの間で人気の高い曲目を含み、ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズを代表する傑作アルバムとの評価を得ている。

 その後もボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズは、「カヤ」("Kaya"/1978年)、「サヴァイヴァル」("Survival"/1979年)、「アップライジング」("Uprising"/1980年)といったオリジナル・アルバムを発表して活動を続けるが、ボブ・マーリーは1981年5月11日に療養先のマイアミで癌のためにその生涯を閉じる(享年36歳)。ボブの死後も、彼の音楽とスピリットは、メロディ・メイカーズのリーダーを務める長男のジギー・マーリーを筆頭にいずれも音楽家への道を歩む彼の子どもたちによって受け継がれている。

 なお、ボブ・マーリーを紹介する従来の文献には、彼のラスタファリズムへの傾倒や、貧困、人種差別 等との闘争をテーマにしたボブの思想や信仰心に焦点を当てるものが多い。彼がその一面 において果たしてきた役割の重要性やその功績を軽視すべきでないことはもちろんだが、同時に、真に優れた音楽家としてのボブ・マーリーの才能に着眼する議論がもっとなされてもよいように思う。バッハ、モーツァルト、ビートルズらがそうであるように、ボブ・マーリーの音楽には時代と人種を越え、さらにはレゲエというジャンルをも越えて輝く真のタレントのみが生み出しうる創造のエネルギーが溢れていると感じるからである。

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