ハートに火をつけて | |
ザ・ドアーズ |
なごみ
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ダンス
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ソウル
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原題 | Light My Fire |
リリース | 1967年 |
作詞・作曲 | ザ・ドアーズ |
プロデュース | ポール・A・ロスチャイルド |
演奏時間 | 7分5秒 |
収録アルバム | 「ハートに火をつけて」(エレクトラ/1967年) |
ミュージシャン | ジム・モリソン(ボーカル)、レイ・マンザレク(キーボード)、ロビー・クリーガー(ギター)、ジョン・デンズモア(ドラムス) |
[レビュー]
ドアーズは、UCLAの映画科の学生だったジム・モリソンとレイ・マンザレクの二人にセッション・ミュージシャンのジョン・デンズモアとロビー・クリーガーを加えて結成され、1967年にアルバム「ハートに火をつけて」(原題は "The Doors")をエレクトラからリリースしてレコード・デビューを飾った。
本ナンバー「ハートに火をつけて」は、「ブレーク・オン・スルー」に続くデビュー・アルバムからの2枚目のシングル・カット・ナンバーだが、全米シングル・チャートの第1位 に輝くことで当時のロック・シーンにおけるドアーズの人気を確立するとともに、とりわけ日本のロック・ファンにとっては、その親しみやすい旋律とオルガン主体のサイケデリックなサウンドによりドアーズを代表する楽曲の一つとして知られることになった。
曲は、ジム・モリソンの伸びやかながらもデモーニッシュな一面を覗かせる独特のロック・ボーカルとレイ・マンザレクのオルガン・プレイを中心に展開する。ロック・バンドとしてのドアーズの最大の魅力がモリソンの悪魔的とも称されるリード・ボーカルにあることはよく指摘されるが、デビュー・アルバムを発表した時点で、すでにジム・モリソンが自らのボーカル・スタイルをほぼ完成に導いていたことは、本ナンバー「ハートに火をつけて」を聴けば容易に理解されるであろう。
一方、幼少の頃よりクラシック・ピアノに親しんでいたと言われるレイ・マンザレクのキーボード・プレイもきわめて個性的である。クラシック風の華やかさを纏ったリック・ウェイクマン(ストローブス、イエス)やジョン・ロード(ディープ・パープル)、あるいは独特のブルース・フィーリングを漂わせるイアン・マクレガン(フェイセズ)らの他のキーボード奏者とは大きく異なり、マンザレクのキーボード・プレイには楽器そのものが生み出すエレクトリックな機械音をそのまま自らのサウンドとして自在に操るようなユニークさがある。
加えて、マンザレクがオルガンのフットペダル・ベースによって創り上げるベース・ラインは、フットペダルゆえに複雑なラインを刻むことができず、シンプルなフレーズを繰り返して奏でるほかないのだが、結果 として、機械的に刻み続けられる無機質なベース・ラインがドアーズ・サウンドにおけるサイケデリックな特色を際立たせる要因として作用しているのだから、この意味からもグループ内でのレイ・マンザレクの存在は無視できないものと言わざるを得ない。(「ハートに火をつけて」においては、左手でベース・キーボードを弾いたとの指摘もある)
なお、本ナンバー「ハートに火をつけて」の作詞・作曲はドアーズによるものとクレジットされているが、実際はギタリストのロビー・クリーガーによって創作された楽曲と伝えられる。
この点に関連して、オリバー・ストーン監督による米国映画「ドアーズ」(1991年公開)の中に、歌詞の一部として登場する "higher" という単語がドラッグを連想させることから、テレビ出演に際して "fire" へ変更するように要請される場面がある。この時にロビー・クリーガーは、「作者の自分がいいと言っているのだから変更しよう」とジム・モリソンを説得している。(エピソードそのものの真偽については筆者にはわかりかねる)
[モア・インフォメーション]
アルバム「ハートに火をつけて」は、本ナンバーのほか、デビュー・シングルの「ブレーク・オン・スルー」、ウイリー・ディクスン作曲のシカゴ・ブルース「バック・ドア・マン」、また、クルト・ワイルの「アラバマ・ソング」などを含み、ドアーズの音楽的ルーツをうかがわせるとともに、その音楽的な多様性をも浮かび上がらせるデビュー・アルバムとなった。
なお、このアルバムの収録曲の中で、最大の注目を集めたナンバーはアルバムのエンディングを飾る「ジ・エンド」である。13分に及ぶ大曲の「ジ・エンド」は、エディプス・コンプレックスをテーマにジム・モリソンが自作したナンバーだが、モリソンのシンガー及び詩人としての魅力とこれを支えるバック・メンバーのサイケデリックなプレイ・スタイルが最も効果 的に融合している点において、ドアーズの音楽性を象徴する楽曲の一つと言える。
「ジ・エンド」は、1979年公開の米国映画「地獄の黙示録」(フランシス・フォード・コッポラ監督)の中で使用されたことによってその人気が再燃することとなった。映画「地獄の黙示録」の中で流れた「ジ・エンド」は、演奏時間を6分半ほどに切り詰めたショート・バージョンだが、このバージョンは1995年にエレクトラがリリースした「ドアーズ/グレイテスト・ヒッツ」に収録されている。
デビュー以降のドアーズは、「まぼろしの世界」(1967年)、「モリソン・ホテル」(1970年)、「L.A.ウーマン」(1971年)などの個性的なアルバムを発表し続けるが、1971年7月に滞在先のパリでジム・モリソンが急死したことにより、ロック・グループとしての性格の変更を余儀無くされる。主役を失ったドアーズは残されたメンバーによってバンドの継続を試みるが、音楽、セールスの両面 において満足な成果を上げることはできず、やがてグループの解散を迎えるのである。
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