ビートルズ特集
Beatles For Sale (1964)
楽曲紹介[2]
"Eight Days A Week"
ジョンとポールの共作による軽快なロック・ナンバー。一見すると、前作までのアルバムに収録されていても全く違和感がないような屈託のないラブ・ソングである。しかしながら、フェード・インというビートルズとしては初めての技術的な試みに加え、イントロと同じギター・フレーズによるコーダでの締め括りなど、このアルバムまで待たされたが故のアイディアの進歩という恩恵には十分に浴していると思われる。主題部分に加えられたスカ風の奇妙なリズム・ギターやハンド・クラップなど、リズム面 での面白さもこの曲の魅力の一つである。
"Every Little Thing"
ジョンの作品。シンプルな印象を受けるナンバーだが、イントロ、間奏の導入部、コーダはいずれも同じギター・フレーズで統一され、一つの曲としての明確なコンセプトをもって作り上げられた様子が伺える。加えて、ビートルズが初めて使用したと言われるティンパニによる劇的な効果 の高まりや、ベース・ギターに代えてアコースティック・ピアノの低音域を活用したベース・ラインなど、低音域での音の扱いにはかなりの工夫の跡が見られる。いずれの点からも、ビートルズが、これまで以上に各曲ごとのコンセプトの違いを重視した曲作りに取り組んでいる様子が伝わってくる。
"I Don't Want To Spoil The Party"
ジョンが作曲したカントリー・タッチの作品。ジョンのダブルトラック・ボーカルでスタートするが、主題部分の途中からシングルトラックへ変化し、この部分ではジョン自身がコーラスを重ねる。その後に現れるミドル・パートではポールがリード・ボーカルを取り、ジョンがコーラスへまわっている。めまぐるしい表情の変化は過去の曲でも聴かれたが、この曲の特徴は、スピーディな展開に合わせてリズム・ギターやドラムスのトラックまでが、細かく、しかし、大胆な変化を見せていることであり、メンバー全員が共通 の立体的なイメージの中で曲の構想を練っていった様子が感じられる。作曲家チームとしての急速な成長をうかがわせるナンバーの一つである。
"What You're Doing"
ポールが単独で書いたとされる作品。ティンパニに導かれる打楽器だけの導入部はビートルズ・ナンバーとしてはきわめて異色だが、これに続いて現れるイントロのギター・リフがこの曲のイメージを主導していく。曲のほぼ全編をポールがダブルトラックで歌い通 すのだが、主題部分の前半はイントロと同じギター・リフによってカバーされる。後半に入るとコーラスが重なることで曲のイメージが変化し、これに合わせてギターのパートもリズム打ちのセクションへと変わる。曲の進行に従ってアレンジが多様化する傾向は、中期以降の作品において顕著となるのだが、前記のナンバーも含め、この時期の作品にすでにその萌芽が読み取れることは、彼らの曲作りに対する意識の変化を考えるうえできわめて興味深い。
以上 "Beatles For Sale" 終わり
注) アルバムの日本語解説のほか、以下の文献を参考にしている。
・ジョン・ロバートソン著/丸山京子訳「ビートルズ全曲解説」(1994年)
・レコード・コレクターズ増刊「ザ・ビートルズ コンプリート・ワークス1」(1998年)
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