ロック名曲セレクション


ディア・ミスター・ファンタジー
  by トラフィック

なごみ
ダンス
ソウル

原題 Dear Mr. Fantasy
リリース 1967年
作詞・作曲 スティーヴ・ウィンウッド、ジム・キャパルディ、クリス・ウッド
プロデュース ジミー・ミラー
演奏時間 5分39秒
収録アルバム 「ミスター・ファンタジー」(アイランド/1967年)
ミュージシャン スティーヴ・ウィンウッド(オルガン、ギター、ベース、パーカッション、ボーカル)、デイヴ・メイソン(ギター、メロトロン、ベース、ボーカル)、ジム・キャパルディ(ドラムス、パーカッション、ボーカル)、クリス・ウッド(サックス、オルガン、ボーカル) [曲別 のクレジットがないため、アルバム全体のクレジットより使用楽器のインフォメーションを転記]

 

[レビュー]

 トラフィックは、スペンサー・デイヴィス・グループで活躍していたスティーヴ・ウィンウッド(ボーカル、キーボード、ギター)を中心に、デイヴ・メイソン(ボーカル、ギター、ベース)、クリス・ウッド(フルート、サックス)、ジム・キャパルディ(ドラムス)を加えた4人によって結成され、1967年にシングル曲「ペーパー・サン」("Paper Sun")をリリースしてレコード・デビューを飾った。

 全英チャートの第5位にランク・インするヒットとなったデビュー曲に続き、その後にリリースした2枚のシングル・レコード(「ホール・イン・マイ・シュー」と「ヒア・ウィ・ゴー・ラウンド・ザ・マルベリー・ブッシュ」)をいずれも全英ヒット・チャートのトップ10に送り込んだトラフィックは、さらなる期待が高まるなかで1967年12月にアルバム・デビュー作の「ミスター・ファンタジー」を発表する。

 スペンサー・デイヴィス・グループ時代に「キープ・オン・ラニング」や「ギミー・サム・ラヴィン」などのヒット曲を放ち、その白人離れした歌唱力を高く評価されていたスティーヴ・ウィンウッドがグループの中心に座ったにもかかわらず、トラフィックの音楽はいわゆる典型的な白人ソウル系のサウンドとはやや距離をおくものとなった。

 トラッド・フォーク調の作風を基調としつつも、個々のプレイヤーの演奏能力の高さに加え、キーボードと管楽器を効果 的に多用するトラフィックの音楽は、トラディショナルな民謡風の旋律にジャズ系の斬新なアレンジを組み合わせるユニークなものと言えよう。また、デビュー・アルバムの「ミスター・ファンタジー」においては、これらの個性に加えて、時代の潮流とも言うべきサイケデリックでコンセプチュアルなロック・サウンドがアルバム全体に色濃くちりばめられている。

 本ナンバー「ディア・ミスター・ファンタジー」は、アルバム「ミスター・ファンタジー」の収録曲であり、また、トラッド、ジャズ、サイケデリックといった当時の彼らを象徴する音楽要素のすべてが取り込まれた初期のトラフィックを代表するナンバーである。

 メロディアスなアコースティック・ギターとこれに従うベース、ドラムスのやや軽めのイントロによって幕を開ける「ディア・ミスター・ファンタジー」は、スティーヴ・ウィンウッドのボーカル・パートのスタートとともに一転してブルース・ロック風のディープなリズムの中へ投げ込まれる。その後は、スティーヴの歌声が醸し出す独特のけだるさを伴うアンニュイなムードの中を深いリズムに導かれるように曲が展開していく。

 楽曲としての基本構造は、ボーカル、ギター・リフ、リズム・セクション(ベースとドラムス)の三者によって積み上げられるオーソドックスなものだが、曲の途中から隠し味的に加えられるキーボードとオブリガート風に同じ音程を繰り返すサックスのフレーズがこの曲に特有のサイケデリックな雰囲気を高めている。

 また、それまでの旋律の展開と直接の関連を持たない独立したコーダによるエンディングや、音の位 相をずらしながらスティーヴのボーカルが左右に揺れるような印象を与える曲の後半の演出など、当時のサイケデリック・ロックらしい手法がいくつも顔をのぞかせるが、いずれもビートルズ「サージェント・ペパーズ」あたりからの影響を受けたものであろうか。

 

[モア・インフォメーション]

 アルバム「ミスター・ファンタジー」には、「ディア・ミスター・ファンタジー」のほかにも、アルバムからのシングル・ヒットとなったトラッド・フォーク調の「ひとりぼっちの娘」やインド楽器を効果 的に用いるデイヴ・メイソンのワルツ作品「アタリー・シンプル」、また、そのタイトルからもサイケ色が濃厚に感じられる「色のついた雨」など初期のトラフィックの音楽性をストレートに示す楽曲が含まれ、彼らのデビューを飾るにふさわしいアルバムになったと言ってよいだろう。

 その後のトラフィックは、1968年8月にセカンド・アルバムの「トラフィック」("Traffic")をリリースする。コンセプチュアルな印象を与えたデビュー・アルバムに対し、個々のメンバーのソング・ライティングを前面 に押し出した感のある「トラフィック」は、いずれ劣らぬクオリティの高い楽曲を揃え、「ミスター・ファンタジー」とは異なる意味で彼らの魅力を強くアピールする作品になった。また、このアルバムからはデイヴ・メイソンの「フィーリン・オールライト」とウィンウッド/キャパルディのコンビによる「パーリー・クイーン」の2曲のロック・クラシックが生み出されている。

 セカンド・アルバムのリリースと前後してデイヴ・メイソンがグループからの脱退を表明し、一度は解散状態に陥ったトラフィックだが、1970年にウィンウッド、ウッド、キャパルディの三人が集合してグループを再結成。トラッド系の楽曲を題材に用いながらもジャズ色の強いアルバム「ジョン・バレイコーン・マスト・ダイ」("John Barleycorn Must Die")を発表して活動を再開する。(再結成前のスティーヴ・ウィンウッドは、エリック・クラプトン、元クリームのジンジャー・ベイカーらとともにスーパー・グループと騒がれたブラインド・フェイスに参加している)

 なお、ソロ・アーティストとしても評価の高いスティーヴ・ウィンウッドは1977年のアルバム「スティーヴ・ウィンウッド」("Steve Winwood")を皮きりにソロ作品の制作にも取り組み、1980年の「アーク・オブ・ア・ダイバー」("Arc Of A Diver")や1986年の「バック・イン・ザ・ハイライフ」("Back In The High Life")などのクオリティの高いアルバムを発表している。

 また、最初にトラフィックを離れたデイヴ・メイソンは、エリック・クラプトンとともにデラニー&ボニー&フレンズの英国ツアーに参加しているほか、1976年には傑作ライヴ・アルバムと名高い「デイヴ・メイソン・ライヴ〜情念」("Certified Live")をリリースしている。

 ・関連ページ トラフィックのリンク集

 ・関連ページ エリック・クラプトン参加グループのリンク集へ(ブラインド・フェイスの特集サイトを含む)

 

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