SWING ART-CSN&Y

ロック名曲セレクション

	ティーチ・ユア・チルドレン
	クロスビー、スティルス、ナッシュ＆ヤング

なごみ
ダンス
ソウル

原題	Teach Your Children
リリース	1970年
作詞・作曲	グラハム・ナッシュ
プロデュース	クロスビー、スティルス、ナッシュ＆ヤング
演奏時間	２分５３秒
収録アルバム	「デジャ・ヴ」（アトランティック／1970年）
ミュージシャン	グラハム・ナッシュ（ボーカル、ギター）、ジェリー・ガルシア（スティール・ギター）、他

　バーズにいたデヴィッド・クロスビー、バッファロー・スプリングフィールドにいたスティーヴン・スティルス、ホリーズのメンバーとして活躍したグラハム・ナッシュの三人は、1968年にロサンゼルスでクロスビー、スティルス＆ナッシュを結成し、翌年にアルバム「クロスビー、スティルス＆ナッシュ」をリリースしてグループとしてのレコーディング活動を開始する。

　透明感のあるアコースティックなサウンドと美しいコーラス・ワークで「組曲：青い目のジュディ」などのヒット・シングルを生んだクロスビー、スティルス＆ナッシュだが、さらに、元バッファロー・スプリングフィールドのニール・ヤングをメンバーに迎えてクロスビー、スティルス、ナッシュ＆ヤング（以下「ＣＳＮ＆Ｙ」）が誕生する。

　1969年の夏にニューヨークのフィルモア・イーストとウッドストックでの野外コンサートでそれぞれステージ・パフォーマンスを披露したＣＳＮ＆Ｙは、翌年の７０年初頭にフル・メンバーによるグループとしての初めてのアルバム「デジャ・ヴ」をリリースする。

　いずれ劣らぬ実力派のソングライターである４人の作品がバランスよく配置され、各メンバーの個性が絶妙にブレンドされたアルバム「デジャ・ヴ」は、リリース直後からリスナーの強い支持を受け、全米のアルバム・チャートで第１位を獲得する大ヒットとなる。また、このアルバムからは「ウッドストック」（原曲はジョニ・ミッチェル）、「ティーチ・ユア・チルドレン」、「僕達の家」（グラハム・ナッシュが作曲）の３曲がシングル・カットされ、そのいずれもが全米チャート入りするヒット・ナンバーになった。

　本ナンバー「ティーチ・ユア・チルドレン」はグラハム・ナッシュのペンによる作品である。ホリーズ時代に「バス・ストップ」などのポップ・ソングを歌い続けたグラハム・ナッシュの温もりを感じさせるソング・ライティングはこの曲においても健在で、「ティーチ・ユア・チルドレン」はアットホームで心暖まるような優しさと美しさに満ちたポップなロック・ナンバーに仕上がっている。

　曲は、アコースティック・ギターによるリズム・パートとゲスト・パフォーマーとして参加したジェリー・ガルシア（グレイトフル・デッド）のスティール・ギターを背景に美しいコーラス・ワークが進行するシンプルなアレンジによって形作られる。

　このグループの看板とも言うべき透明感のあるハーモニーは、リード・ボーカルに対して重唱的に構成される前半のパートからオブリガート風に挿入される後半部分へと鮮やかな表情の変化を見せ、また、リズムを打つアコースティック・ギターの陰で隠し味的に追加されるパーカッションが曲の流れに応じて強弱の変化を加えるなど、曲の細部におけるアレンジ面での工夫の跡が興味深い。

　ＣＳＮ＆Ｙは、４人のソングライターの個性が拮抗して生み出す音楽上のバリエーションとその相互のバランスが大きな魅力のグループであり、「ティーチ・ユア・チルドレン」の一曲のみをもってその魅力を語り尽くせるものではない。しかしながら、その一方で、この曲が、ブルース、ジャズ、サイケデリック、アジテートなどの様々な側面を持つ当時のウエストコースト・ロックのなかで、その最もハート・ウォーミングでピースフルな一面を象徴するナンバーであることは否定し難いようにも思われるのである。

　アルバム「デジャ・ヴ」は、上述のシングル・ヒット・ナンバーに加え、スティーヴン・スティルスのシャープなハード・ロック風のナンバー「キャリー・オン」、激しさの中にも幻想的なイメージが漂うデヴィッド・クロスビーの「デジャ・ヴ」、映画「いちご白書」の中で使用され、日本のリスナーの間でも人気の高いニール・ヤングの「ヘルプレス」など、各メンバーの持ち味を生かした魅力あふれるナンバーが収録され、当時のウエストコースト・ロックを代表する名盤の一つとしてロック・ファンに聴き継がれることとなった。

　ＣＳＮ＆Ｙは、「デジャ・ヴ」のリリースに続いてライブ・アルバムの「４ウェイ・ストリート」（1971年）を発表するものの、その直後にグループの解散を表明する（「４ウェイ・ストリート」も全米アルバム・チャートの第１位に輝いている）。

　その後、1988年に再結成されたＣＳＮ＆Ｙは、この年に通算２枚目となるスタジオ録音のアルバム「アメリカン・ドリーム」を発表してその変わりないコーラスの美しさでファンを魅了する。また、1999年にもアルバム「ルッキング・フォワード」をリリースしたＣＳＮ＆Ｙは、翌年の2000年に「ＣＳＮＹ２Ｋツアー」と名付けられたコンサート・ツアーをおこなってファンの声援に応えている。