タイトル | 誰がジョン・レノンを殺したか? |
著者 | フェントン・ブレスラー著/島田三蔵訳 |
発行 | 音楽之友社 1990年 |
平日の午後だった。唐突に訪ねてきた友人が言った。
「ジョンが死んだ。ファンに射殺されたそうだ。」
午後3時から放映される芸能番組を見て知ったらしい。
「これはあまりにもアメリカ的な事件だ」とだけ言い残して彼は帰って行った。
翌日も雪が降ったことを憶えている。
自分の人生をどれほど大きく変えていく事件が起こったのか、この時にはわかっていなかった。
翻って本書の紹介である。著者のブレスラーは、イギリスの法曹出身者で、主に犯罪関係のジャーナリストとして活躍中と記述されている。イギリス人と思われるが、ビートルズとの関連は定かではない。少なくともマニアックなファンではないと想像される。著者の推論は、ジョン・レノン射殺の実行犯であるマーク・チャップマンがアメリカ政府機関によるマインドコントロールによって操られ、その意のままにジョンを殺害したとの仮説に基づくものである。
決してスキャンダルを狙って本書を著したのでないことは、著者による緻密な取材の裏づけからも明らかである。惜しまれることは、ジョン・レノンという一人の音楽家を一国の政府機関が死に追いやらねばならないまでに恐れていたことへの合理的な説明が欠落している点であろうか。左翼の運動家として本書に描かれるジョンのイメージは、ビートルズと彼の音楽を通してその人柄を感じ続けてきたファンにとって、容易に受け入れられるものか疑問を感じずにはいられない。
「あまりにもアメリカ的」と感じる日本人の平均的な感覚が、どこまで英米のファンとの同質性を持ち得るかはわからないが、説明をつけることへの困難を誰もが感じる事件であったことは確かだと思う。ただし、その不条理性が本書の結論を導くと考えることには、少なからずロジックの飛躍があると言わざるを得ない。
なお、本書の原題は "The Murder of John Lennon" であり、1989年にイギリスで最初に出版されている。
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