アイ・シャル・ビー・リリースト | |
by ザ・バンド |
なごみ
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ダンス
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ソウル
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原題 | I Shall Be Released |
リリース | 1968年 |
作詞・作曲 | ボブ・ディラン |
プロデュース | ジョン・サイモン |
演奏時間 | 3分14秒 |
収録アルバム | 「ミュージック・フロム・ビッグ・ピンク」(キャピトル/1968年) |
ミュージシャン | リチャード・マニュエル(ボーカル、ピアノ)、ロビー・ロバートスン(ギター)、ガース・ハドスン (オルガン)、リック・ダンコ(ベース)、レヴォン・ヘルム(ドラムス) |
[レビュー]
1960年代の始めからロニー・ホーキンスやボブ・ディランのバック・バンドとして活躍していたザ・バンドだが (バック・バンド時代にはホークス、あるいは、レヴォン・ヘルム&ホークスと名乗っていた)、彼らのオリジナル・アルバムによるデビューは、1968年の「ミュージック・フロム・ビッグ・ピンク」によってようやく果 たされることとなった。
「アイ・シャル・ビー・リリースト」は、アルバム「ミュージック・フロム・ビッグ・ピンク」のエンディングを飾るナンバーである。また、作曲者のボブ・ディランにとっても、後々、多くのミュージシャンにカバーされるなど、その代表作に数えられる名曲の一つとなった。
曲は、自らが奏でるピアノ伴奏とともに、絞り出すようなファルセットで歌うリチャード・マニュエルのボーカル・パートを中心に展開する。ライブな残響を十分に生かしたリチャードのピアノは、あたかも天上の音楽のごとく澄み切った美しさを響かせている。ロビーのギターとリックのベース・ラインはボーカル・パートを優しく包み込むように流れ、効果 音的にバックに挿入されるガース・ハドスンのオルガンの調べとともに、この曲が持つ独特のリリジャスなムードをいっそう高めるかのような効果 を生み出している。
ところで、日本のファンの間では、アメリカの伝統音楽をロックンロールへ取り入れたロック・バンドの代表格としてシンボル的に扱われている感のあるザ・バンドだが、筆者の個人的な体験によれば、米国におけるザ・バンドの人気は、同時代のグレイトフル・デッドやオールマン・ブラザース・バンドなどと比較しても決して高いとは言えないようである。
カントリーやブルースなどの音楽スタイルをほぼストレートに生かし切ることで伝統音楽の美しさを伝えてきたグレイトフル・デッドらに対して、ザ・バンドの作品には、伝統的な音楽スタイルをありのままに生かして作り上げたと言い切れるナンバーがきわめて少ない。すなわち、一聴して明らかなほどにカントリーやブルースのスタイルに依拠して創作されたと感じられる楽曲がザ・バンドのオリジナル曲にはほとんど見当たらないのであり、このことが、ザ・バンドの意外とも思える米国でのポピュラリティの低さの一因ではないかと考えられる。
彼らの音楽スタイルにおける前記のような特徴は、メンバーの大半がカナダの出身者であるというザ・バンドの沿革的な背景にもその遠因があるのかもしれないが、いずれにせよ、彼らの作品は、伝統音楽のスタイルを単純に自らの曲作りに取り入れたと言えるほど安易なタイプのものではない。ザ・バンドの音楽は、その作者あるいは演奏者としての各メンバーのスピリチュアルな要素が個々の作品に色濃く刻印されるところにその本質が見い出されると言うべきであり、「アイ・シャル・ビー・リリースト」においても、その特徴は十分に生かされていると断言してよいであろう。
[モア・インフォメーション]
アルバム「ミュージック・フロム・ビッグ・ピンク」には、「アイ・シャル・ビー・リリースト」と並ぶザ・バンドの代表曲「ザ・ウェイト」が含まれている。ロビー・ロバートスンが作曲した「ザ・ウェイト」は、デニス・ホッパー監督の米国映画「イージーライダー」の中で使用されるなど、ロック・スタンダードの一つとして今日でも人気の高いナンバーである。
デビュー後のザ・バンドは、「ザ・バンド」(1969年)、「カフーツ」(1971年)、「南十字星」(1975年) などのクオリティの高いアルバムを発表し続け、1976年にサンフランシスコのウィンターランドで行われたコンサート「ラスト・ワルツ」を最後に、グループの解散を表明した。
「ラスト・ワルツ」には、ザ・バンドのメンバーのほか、ボブ・ディラン、エリック・クラプトン、ヴァン・モリソン、ニール・ヤング他の錚々たるアーティストが顔をそろえ、ザ・バンドが同時代のロック・ミュージシャンに与えた影響力の大きさをうかがわせるとともに、このコンサートそのものが70年代のロックシーンにおけるエポック・メイキングなイベントとして語り継がれることとなった。(「ラスト・ワルツ」は、「タクシードライバー」などで知られるマーティン・スコセッシ監督により同名映画として映像化されている)
なお、グループとしての活動のみならず、ロビー・ロバートスンがジェシ・ウィンチェスター (1970年リリースの「ジェシ・ウィンチェスター」)、リック・ダンコがボビー・チャールズ (1972年リリースの「ボビー・チャールズ」) のアルバムをそれぞれプロデュースするなど、ザ・バンドの各メンバーが才能あるアーティストの発掘と紹介のために尽力していることを付け加えておきたい。
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