ロック名曲セレクション


ディキシー・チキン
  リトル・フィート

なごみ
ダンス
ソウル

原題 Dixie Chicken
リリース 1973年
作詞・作曲 ローウェル・ジョージ、キビー・マーティン
プロデュース ローウェル・ジョージ
演奏時間 3分55秒
収録アルバム 「ディキシー・チキン」(ワーナー/1973年)
ミュージシャン ローウェル・ジョージ(ギター、ボーカル)、ポール・バレル(ギター、ボーカル)、サム・クレイトン(コンガ)、ケニー・グラッドニー(ベース)、リッチー・ヘイワード(ドラムス)、ビル・ペイン(キーボード、ボーカル)、ボニー・ブラムレット(ボーカル)、デビー・リンゼィ(ボーカル)、トレット・フューア(ボーカル)、グロリア・ジョーンズ(ボーカル)、ステファニー・スパーヴィル(ボーカル)、ボニー・レイット(ボーカル)、ミルト・ホランド(タブラ)、マルコム・セシル(キーボード)、ダーリン・ダン・ハットン(ボーカル)、フレッド・タケット(ギター) [曲ごとのクレジットがないためアルバム全体のクレジットを転記]

 

[レビュー]

 リトル・フィートは、フランク・ザッパ率いるマザーズ・オブ・インベンションでプレイしていたギタリストのローウェル・ジョージとべーシストのロイ・エストラダを中心に1969年にロサンゼルスで結成され、翌年の70年にアルバム「リトル・フィート」をリリースしてレコード・デビューを飾った。オリジナル・メンバーは、ローウェル・ジョージ(ギター、ボーカル)、ロイ・エストラダ(ベース)、リッチー・ヘイワード(ドラムス)、ビル・ペイン(キーボード、ボーカル)の4人

 デビュー当時からブルース、カントリーなどのトラディショナルな音楽様式をベースに、ローウェル・ジョージの個性あふれるリード・ボーカルとスライド・プレイ主体のギター・ワークを中心に独自の音楽世界を創りあげていたリトル・フィートは、1972年に発表したセカンド・アルバム「セイリン・シューズ」においてさらにそのサウンドの完成度を高めていく。

 この時代のリトル・フィートは、LAを中心に隆盛のときを迎えていた当時のウエストコースト・ロック界において、ブルースやカントリーを土台に自らの創作スタイルを生み出そうと試みるミュージシャン達の中でその主翼を担ったグループの一つと言えるだろう。リンダ・ロンシュタットザ・バーズのカバーでも知られるローウェル・ジョージ作曲の「ウィリン」は、まさにこの時期のリトル・フィートを代表する名曲と言える。

 リトル・フィートにとって最初の転機は、ベーシストのロイ・エストラダがグループを脱退する1972年の後半に訪れる。離脱したロイに代わってグループに加わったケニー・グラッドニー(ベース)、サム・クレイトン(パーカッション)、ポール・バレル(ギター)の3名は、ニュー・オリンズ系のディープなリズム感覚をグループへ持ち込み、リトル・フィートのサウンドはサザン・ロック風の深いシンコペーションを効かせたリズミックなものへと変質していく(ケニーとサムは米国南部ルイジアナ州の出身)。そして、その効果 が最初に色濃く表れた作品が、1973年に発表された彼らのサード・アルバム「ディキシー・チキン」である。

 本ナンバー「ディキシー・チキン」は、アルバム「ディキシー・チキン」のタイトル曲であるとともに、そのオープニングを飾るにふさわしく新生リトル・フィートの新たなサウンドの方向性を如実に示した作品と言える。

 曲は、ディープなうねりを効かせたベースとドラムスに短く繰り返されるピアノのフレーズが絡むイントロによって開始される。やがてローウェル・ジョージのリード・ボーカルがスタートし、さらには女性コーラスとリズム・ギターのパートが追加されてサウンド全体が厚みを増すが、曲の骨格は、イントロから鳴り続けるベース、ドラムス、ピアノのトラックが土台となって黒人音楽を思わせるかのような深いリズムの中で醸成されていく。

 本ナンバー「ディキシー・チキン」が示すファンキーなリズム表現への著しい傾倒は、前記のとおり新加入の3人によってもたらされた側面 が強い。ただし、デビュー当初から音階に頼らないスライド・ギターを駆使して脱西洋的な音楽センスを発揮していたローウェル・ジョージらのオリジナル・メンバー達が、元来、ディープ・サウス的なサウンドへの志向性を根深く持ち合わせていたことも事実であろう。

 ウエストコースト・ロックに米国南部のブルージーなリズム感をミックスすることで新感覚とも言うべき独自の創作スタイルを作り上げた当時のリトル・フイートにとって、「ディキシー・チキン」は、その音楽性とスピリットの両方を象徴するナンバーではなかったかと感じられるのである。

 

[モア・インフォメーション]

 アルバム「ディキシー・チキン」は、タイトル・ナンバーに加え、アラン・トゥーサン作曲の「オン・ユア・ウェイ・ダウン」、フレッド・タケット作曲の「フール・ユアセルフ」、ローウェル・ジョージとビル・ペインの共作でローウェルのスライド・ギターがその例えようのない魅力を発揮する「ラファエット・レイルロード」など、リトル・フィートのサウンドが放つ魅力を余すところなく伝える秀れた楽曲を多く含み、リトル・フィートの最高傑作と呼ばれるとともに70年代ロック史に残る名盤としての評価を確立する。

 さらにリトル・フィートは、ボニー・レイット、エミルー・ハリスらが参加してグループとして初のアルバム・チャート入りを成し遂げた「アメイジング! リトル・フィート」(原題は "Feats Don't Fail Me Now" / 1974年)や、各メンバーのソングライターとしての個性が光る「ラスト・タイム・レコード」(1975年)など、「ディキシー・チキン」の路線を引き継いで味わい深いサウンドを響かせるアルバムを相次いでリリースしていく。

 その後、グループは、1979年にリーダー格のローウェル・ジョージが心臓病によって他界したことで一時的な解散状態に陥るものの、ボーカリストのクレイグ・フラーとギタリストのフレッド・タケットを新メンバーに迎えて活動を再開し、1988年にアルバム「レット・イット・ロール」を発表する。ローウェル・ジョージを欠いたことでサウンドそのものには少なからずの変化が生じたものの、「レット・イット・ロール」は、リトル・フィートとして過去最高のセールスを記録するヒット・アルバムになったのである。

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