アイム・ノット・イン・ラヴ | |
10cc |
なごみ
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ダンス
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ソウル
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原題 | I'm Not In Love |
リリース | 1975年 |
作詞・作曲 | グラハム・グールドマン、エリック・スチュワート |
プロデュース | 10cc |
演奏時間 | 6分2秒 |
収録アルバム | 「オリジナル・サウンド・トラック」(マーキュリー/1975年) |
ミュージシャン | エリック・スチュワート(ボーカル、エレクトリック・ピアノ)、グラハム・グールドマン(ギター、ベース、ボーカル)、ケヴィン・ゴドレイ(シンセサイザー、ボーカル)、ロル・クレーム(ピアノ、ボーカル) |
[レビュー]
70年代イギリスのロック・シーンを彩ったポップ・ロック・バンドの10ccは、グラハム・グールドマン、エリック・スチュワート、ケヴィン・ゴドレイ、ロル・クレームの4人によって結成され、1972年にUKレーベルからシングル曲「ドナ」をリリースしてレコード・デビューを飾った。
10ccとしてのデビュー前に、すでにホットレグズ("Hotlegs")のグループ名で「ネアンデルタール・マン」のシングル・ヒット(全英チャートの第2位 )を放っていた彼らは、デビュー当初よりマンチェスター出身のオールスター・バンドとしてメディアの注目を集める。モッキングバーズでの活動歴があり、優れたソングライターとしても実績を残すグラハム・グールドマン、マインドベンダーズで活躍していたエリック・スチュワート、さらに腕利きのセッション・マンとして知られるゴドレイとクレームが結集した10ccは、メンバーのいずれもがマンチェスターを中心に当時の英国ロック・シーンを支えていた人気アーティストであったためである。
(なかでもグラハム・グールドマンは、ヤードバーズやホリーズ、ハーマン・ハーミッツなどのポップ・グループへ多くのヒット曲を提供したソングライターとして知られている。グラハム・ナッシュが在籍したホリーズの代表曲であり、ハーマン・ハーミッツのバージョンもヒットした「バス・ストップ」は当時のグールドマンを代表するヒット・ナンバーと言えるだろう/ホリーズのリンク集へ)
50年代ドゥ・ワップ風ロックンロールのパロディと言える10ccのデビュー曲「ドナ」は全英チャートの第2位 へ躍進するヒットとなった。さらに1973年にデビュー・アルバムの「10cc」をリリースし、翌年の74年にセカンド・アルバム「シート・ミュージック」("Sheet Music")を発表した彼らは、これらの作品から「ディーン・アンド・アイ」、「ウォール・ストリート・シャッフル」、「シリー・ラヴ」など多くのヒット・シングルが生み出されることでポップ・ロック・グループとしての人気とキャラクターを確立する。
そして、直後にリリースされた彼らのサード・アルバム「オリジナル・サウンド・トラック」(1975年)によって10ccの人気とアーティストとしての評価はそのピークを迎えることになった。収録曲のほとんどが映画のサウンドトラックのパロディとして創作された「オリジナル・サウンド・トラック」は、発想の秀逸さとコンセプチュアルな面 白さ、それを裏付ける音楽上の豊かなアイディアと洗練されたサウンド感覚で10ccの最高傑作との評価を受けるとともに、彼らの最大のヒット・ナンバー「アイム・ノット・イン・ラヴ」(全英トップチャート獲得/全米チャート第2位 )を世に送り出している。
本ナンバー「アイム・ノット・イン・ラヴ」は、キーボードとリズム・トラックのイントロに導かれ、リード・ボーカルが美しい旋律を描く主題部分へと展開する。曲全体の構造はほぼ同じメロディとアレンジを数回にわたって繰り返すシンプルなものだが、霧のなかで幾重にもエコーがかかったような独特の奥行きを感じさせる複雑なバック・コーラスが他の曲では味わうことのできないこの曲のユニークな印象を創り上げている。
オリジナル・メンバーの4人が揃っていた当時の10ccは、類い稀なソングライター・コンビであるグールドマンとスチュワートによる個性的な旋律に、ゴドレイ&クレームが生み出す豊富なアイディアと斬新なサウンド・クリエイトを組み合わせることで才能豊かな個性派のポップ・ロック・バンドとしてその輝きを放っていた。オープニングからサスペンデッドのコードを駆使する美しくも特異な旋律と複雑で奥深いコーラスを生かしたサウンド・アレンジメントが耳に残る「アイム・ノット・イン・ラヴ」は、各メンバーのアーティストとしての個性とその相互作用が十分な魅力を発揮して生み出された10ccのシンボリックな傑作ナンバーと言えるのではないだろうか。
[モア・インフォメーション]
アルバム「オリジナル・サウンド・トラック」は、瀟洒なフランス映画の主題歌を思わせる組曲「パリの一夜」やアメリカのサスペンス・ムービー風の展開が印象的な「ゆすり」などタイプは異なるもののいずれも優れたポップ感覚と豊かなバリエーションを感じさせる楽曲で構成され、10ccの代表作であるとともに70年代のブリティッシュ・ポップ・シーンを象徴するアルバムの一つとしてその名声を確立した。また、「オリジナル・サウンド・トラック」からは「アイム・ノット・イン・ラヴ」に加えてロル・クレームとエリック・スチュワートの共作ナンバー「人生は野菜スープ」がシングル・カットされ、この曲も全英チャートの第7位 にランク・インするヒットを記録している。
その後、1976年に第4作目となるアルバムの「びっくり電話」("How Dare You!")をリリースした10ccだが、このアルバムを最後にケヴィン・ゴドレイとロル・クレームがグループを脱退し、10ccはグールドマン、スチュワートのコンビとゴドレイ&クレームの2チームに分裂する。
脱退後のゴドレイ&クレームは、二人がMITと共同開発したギズモ(ギターのアタッチメント)の可能性を追求して3枚組のアルバム「ギズモ・ファンタジア」(1977年)を発表し、また、音楽ビデオの制作にも手を染めてポール・マッカートニーのコンサート映画 "Paul Is Live In Concert On The New World Tour"(1994年)を監督するなど音楽、映像の多方面 にわたる活躍を続ける。(ポールのコンサート映画についてはビートルズ関連用語集の「ポールの2回のワールドツアー」をご参照)
一方、ゴドレイ&クレームの離脱後も10ccを継続するグールドマンとスチュワートは「愛ゆえに」("Deceptive Bends"/1977年)、「ブラディ・ツーリスト」("Bloody Tourist"/1978年)などのアルバムを発表してオリジナリティあふれる10ccサウンドの探求を続けていく。これらのアルバムからは「愛ゆえに」、「グッド・モーニング・ジャッジ」、「トロピカル・ラヴ」などの複数のシングル・ヒット・ナンバーが生み出されている。
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