イースト・ウエスト | |
ザ・バターフィールド・ブルース・バンド |
なごみ
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ダンス
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ソウル
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原題 | East-West |
リリース | 1966年 |
作詞・作曲 | マイク・ブルームフィールド、ニック・グレイヴナイツ |
プロデュース | ポール・A・ロスチャイルド、マーク・アブラムスン |
演奏時間 | 13分10秒 |
収録アルバム | 「イースト・ウエスト」(エレクトラ/1966年) |
ミュージシャン | ポール・バターフィールド(ハーモニカ)、マイク・ブルームフィールド(ギター)、エルヴィン・ビショップ(ギター)、マーク・ナフタリン(キーボード)、ジェローム・アーノルド(ベース)、ビリー・デイヴンポート(ドラムス) |
[レビュー]
ホワイト・ブルース(白人がプレイするブルースの通称)の先駆的存在であり、また、黒人音楽の魅力を白人の音楽マーケットへ最初に伝えたロック・グループの一つとして米国ポップス史上に際立った存在感を放つバターフィールド・ブルース・バンドは、1965年にアルバム「ポール・バターフィールド・ブルース・バンド」をエレクトラからリリースしてレコード・デビューを飾る。
白人のソリスト4名に黒人のリズム・プレイヤー2名(ベーシストのジェローム・アーノルドと初代ドラマーのサム・レイはいずれもハウリン・ウルフのバック・メンバーを務めていた)を加えた人種混成のこのグループは、エルモア・ジェイムスの名演で知られる「シェイク・ユア・マネー・メイカー」などオーソドックスなブルース・ナンバーのカバー曲を披露し、ホワイト・ブルースを代表するロック・バンドとしての個性をデビュー当時から発散していた。
そして、翌年の66年にセカンド・アルバムの「イースト・ウエスト」を発表したバターフィールド・ブルース・バンドは、このアルバムでホワイト・ブルース路線をさらに押し進めながらも、その一方でアルバムの表題曲「イースト・ウエスト」において黒人音楽のピュアなコピーとは異なる新たな音楽性をも同時に指し示すこととなる。(セカンド・アルバムからドラマーがビリー・デイヴンポートに交代している)
本ナンバー「イースト・ウエスト」は、マイク・ブルームフィールドのリズム・ギターに乗せてエルヴィン・ビショップが描き出す創造性にあふれたギター・ソロでスタートする。エルヴィンのソロはやがてバターフィールドによるブルース・ハープのソロへと受け継がれるが、この曲の真の魅力が発揮されるのは、バターフィールドの後を受けて、マイク・ブルームフィールドのギター・ソロが滑り出すようにスタートするその瞬間からである(演奏開始からおよそ3分後)。
このソロ・パートでマイクが紡ぎ出すギター・フレーズは、東洋的な旋律の影響を明らかに感じさせるラーガ・ロックの走りとも言うべきものであり、それまでのブルースあるいはブルース・ロックにおけるソロ・プレイのなかでは全く聴くことのできなかった先進的なギター・ワークである。
曲は、マイク・ブルームフィールドの緊張感に満ちたギター・ソロの終了とともに一転して落ち着きを取り戻し、引き続きマイクのギターが生み出すやや優美な旋律によって一時的に柔和な表情を見せる(演奏開始から約7分過ぎ)。このパートは、やがてエルヴィンとマイクによるツイン・リードへと引き継がれ、二人のユニゾンによるプレイを交えながら(マイクが低音、エルヴィンが高音のパートを担当してスタートするが、二人のポジションは曲が進むなかでめまぐるしく入れ替わる)、再び東洋的な旋律が象徴的に提示されるエンディングへと進行していく。
本ナンバー「イースト・ウエスト」は、黒人音楽としてのブルースの様式を受け継ぎながらも、これに東洋的な旋律のアイディアを加味するという手法によりブルース・ロックにサイケデリックな要素をもたらすものとなった。また、この曲は、数分に及ぶソロ・プレイを音楽上の新たな表現手段として提示することで、エリック・クラプトンのクリームなど多くの白人ブルース・ロック・バンドが採用するインプロビゼーション主体の演奏スタイルを触発する一因になったものとも捉えられる。英米における60年代後半のロック・シーンの中で、この曲が果 たした歴史的な役割を過少評価すべきでないと感じる所以である。
[モア・インフォメーション]
マイク・ブルームフィールドとエルヴィン・ビショップのツイン・リードによるギター・アンサンブルが、このグループの最大の看板プレイであることは疑いがない。ただし、エルヴィンがその音質に固さと力強さを感じさせるギター・ワークで先進性に富むフレーズを生み出していくのに対し、マイクのギターはアルバート・キングやフレディ・キングの直系とも言うべきオーソドックスなブルース・スタイルでしなやかなソロを奏でるタイプのもので、二人の個性は大きく異なると言ってよい。
従って、本ナンバー「イースト・ウエスト」において、本来、古典的なブルースの影響をより強く感じさせるはずのマイク・ブルームフィールドが唐突にブルース離れを起こしたかのようなラーガ・ロック風のギター・フレーズを生み出していることは、彼のその後の活動歴を合わせて考えると実に興味深い。
マイク・ブルームフィールドはアルバム「イースト・ウエスト」を最後にバターフィールド・ブルース・バンドを脱退し、ニック・グレイヴナイツらとともにエレクトリック・フラッグを結成する。サックス奏者のデヴィッド・サンボーンらを起用したエレクトリック・フラッグは、デビュー当時からブラス・ロック的なサウンドを志向していく。
一方、ポール・バターフィールドは、通算3枚のアルバムを残してバターフィールド・ブルース・バンドを解散する。その後のバターフィールドは、1973年にピアニストのロニー・バロン、ジェフ&マリア・マルダーのジェフ・マルダー(ボーカル)、ギタリストのエイモス・ギャレットらとともに新グループのベター・デイズを結成し、同年にホワイト・ブルース路線のアルバム「ベター・デイズ」をリリースしている。
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