ロック名曲セレクション


アクアラング
  ジェスロ・タル

なごみ
ダンス
ソウル

原題 Aqualung
リリース 1971年
作詞・作曲 イアン・アンダーソン、ジェニー・アンダーソン
プロデュース イアン・アンダーソン、テリー・エリス
演奏時間 6分34秒
収録アルバム 「アクアラング」(クリサリス/1971年)
ミュージシャン イアン・アンダーソン(ボーカル、ギター)、マーティン・バレ(ギター)、ジョン・エヴァン(ピアノ、オルガン、メロトロン)、ジェフリー・ハモンド(ベース)、クライブ・バンカー(ドラムス、パーカッション)

 

[レビュー]

 シンガー兼フルート奏者のイアン・アンダーソンを中心に、クラシック、フォーク、ジャズ、ブルースなどの多彩 な要素を取り込んだロックを展開してブリティッシュ・ロック史上にユニークな足跡を残すジェスロ・タルは、1968年3月にシングル・ナンバーの「サイシャイン・デイズ」を発表してレコード・デビューを飾った。オリジナル・メンバーは、イアン・アンダーソンに加え、ミック・エイブラハム(ギター)、グレン・コーニック(ベース)、クライブ・バンカー(ドラムス)の4人。 その特徴あるバンド名は、18世紀のイギリスに実在した農学者の名前に由来すると言われる。

 デビュー・シングルが鳴かず飛ばずの結果に終わったものの同年8月のサンベリー・ジャズ・アンド・ブルース・フェスティバルに出演して一躍ファンの注目を集めたジェスロ・タルは、1968年9月にデビュー・アルバムの「日曜日の印象」(原題は "This Was")をリリース。このアルバムが全英チャートのトップ10入りするヒットとなって、ジェスロ・タルは人気ロック・バンドとしての基盤を築き上げる。

 ロック史上初めてとも言われるフルートの大胆な導入によってその個性をきらめかせながらも、デビュー・アルバムにおいてはオーソドックスなブルース・ロックの影響が色濃く漂っていたジェスロ・タルは、続いてリリースした「スタンダップ」(1969年/"Stand Up")と「べネフィット」(1970年/"Benefit")の2枚のアルバムにおいて、ジャズ、フォーク、ブルースなどの複雑な音楽要素が混在する独特の音楽世界を創り上げる。また、これらのアルバムのコマーシャルなヒットにも助けられ、当時の英国ロック界におけるジェスロ・タルの人気は次第に揺らぎようのないものとなっていった。

 (「スタンダップ」の録音時にギターがマーティン・バレへ交代。「ベネフィット」のレコーディング時にはキーボード・プレイヤーのジョン・エヴァンがメンバーに加わり、さらに「べネフィット」のリリース直後にベーシストがジェフリー・ハモンドに交代して「アクアラング」制作当時のラインナップが顔を揃える)

 ジェスロ・タルは、1971年に通算4枚目のアルバムとなる「アクアラング」をリリースする。「アクアラング」は、個々の収録曲が示す楽曲としてのハイレベルな構築力、そして、それぞれのナンバーの豊かな個性やそのバリエーションの広がりによってジェスロ・タルの音楽が飛躍的な成長を遂げたことを実証し、彼らの最高傑作とも呼ばれるアルバムとなった。

 本ナンバー「アクアラング」は、アルバム「アクアラング」のタイトル・ナンバーであるとともに、当時のジェスロ・タルの音楽とその充実ぶりを象徴するナンバーと言える。また、この曲は、アルバムからシングル・カットされてヒットを記録するなど、ジェスロ・タルの全キャリアを通 じて彼らの代表曲の一つに数えられるヒット作となった。

 曲は大きく分けて3つのパートから構成されるが、第一のパートはプロローグ兼エピローグとも言うべき曲の始まりとエンディングを飾る部分である。このパートはギター・リフを思わせるギターとベースのユニゾンでスタートするが、直後にアンダーソンのボーカル・ラインがさらにメロディを重ねることで、このフレーズが単なるリフではなく第一主題を構成する曲の主要素であることを明らかにしていく。

 続くセカンド・パートでは、一転してギターとピアノのアコースティックなサウンドが主導する静謐なアレンジの中を、エコーの深いアンダーソンのボーカルが奥行きのある歌世界を創り上げる。自然な流れの中で切れ目なく続くボーカル・ラインが導くサード・パートでは、アコースティック・ギターが刻むアップテンポのリズムを背景にほとばしるように流れ出るエレキ・ギターのソロとアンダーソンのエネルギッシュなリード・ボーカルが印象的である。

 動から静、静から動へとテンポよく切り替わる曲の展開からはあたかもメリハリの効いた演劇を見ているかのような鮮やかさが感じられ、イントロのファースト・パートが再び登場するエンディングに至って聴き手は最初の情景へ突然に引き戻されたかのような言い知れぬ 余韻に浸ってこの音楽劇の終幕を迎える。欲を言えば、このグループの看板プレイとも言うべきイアン・アンダーソンのフルートを聴けないことが少し残念に感じられるが、裏を返すならば、フルートを使う余地がどこにも見出せないほどに楽曲全体の構築力と個々のプレイの完成度が高いナンバーと考えられるだろう。

 

[モア・インフォメーション]

 アルバム「アクアラング」は、本ナンバー「アクアラング」と肩を並べるジェスロ・タルの代表曲「蒸気機関車のあえぎ」やトラッド・フォーク調の旋律が印象的な「マザー・グース」、また、イアン・アンダーソンのフルートが大空を駆け巡るかのごとく自在に旋律を紡ぎ出す「アップ・トゥ・ミー」など、個々のキャラクターは異なるもののいずれもこのグループの魅力をストレートに伝える秀曲を揃えてジェスロ・タルを代表するアルバムとしての評価を確立した。

 さらにジェスロ・タルは、1972年にトータル・コンセプト・アルバム「ジェラルドの汚れなき世界」("Thick As A Brick")を発表してロック・シーンの注目を集める。8才の子どもが書いたポエムを題材に制作されたと言われる「ジェラルドの汚れなき世界」は、アルバム全体を1つの楽曲で貫くコンセプチュアルなアイディアと構成力、個々のプレイ・パートの高いクオリティによって当時のアート・ロックあるいはプログレッシブ・ロックの多くのアーティストに多大な影響を与えるとともに、セールス面 においても大ヒットを記録するベストセラー・アルバムとなった。

 続く1973年には、イアン・アンダーソン自らが監督、脚本、編集を務める映画とジェスロ・タルのライヴ・ステージを一体化させた実験的なアルバム「パッション・プレイ」("Passion Play")がリリースされる。批評家がこの作品の出来映えを酷評するなど音楽の演劇化というジェスロ・タルの実験精神が当時から十分に理解されていたとは言い難いが、アルバムそのものは全米のアルバム・ランキングでトップ・チャートに輝くなどの大ヒットを記録している。

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